桜の花が散る。強い風と共に多くの花びらがくるくる舞うと、桜のカーテンで隠されて君の姿が一瞬見えなくなる。

 消えてしまったのではないかと不安になる。
 再び姿を見せてくれて僕は安堵する。

 落ちていった花びらが造り上げたピンク色の絨毯。とても綺麗で魅力的だったのでそこにぴょんと移動した。黒く艶やかな僕の身体とその絨毯の色はきっと相性が良いと思う。

 フワリと花びらが頭の上に乗った。
 ブルンブルンと小刻みに身体を揺らして落とした。

 僕は美味しそうで儚そうな、その花びらをひとつくちばしに咥えた。ピンク色が大好きな君へ。



 翼を広げ、桜の絨毯から足をトンと離した。とても桜にお似合いな空色と、純粋そうな白色で描かれた水彩画のような空に向かって。

 見ていた桜の木が「いってらっしゃい」と微笑んでくれた。


 僕は今、カラス。