人払いの結界を張り始めてから一週間。
集団不審死事件は一応の収束を見せた。
これもそれも私のおかげだ。
「うーん。まあ、納得はいかないけど、君が悪霊を除霊したって日から集団不審死はなくなったし……上層部もこれ以上捜査をしても無駄だってわかったみたいだしね」
そういうことでお巡りさんから成功報酬の5万円ももらって絶好調の私は、今日もレイミちゃんのライブが行われる廃墟に来ていた。
「なんで交通整理のおっちゃんみたいな仕事を私が……」
ぶつくさいいながら霊共の整列を手伝う私を、同じく霊を誘導していたマネージャーさんが小突く。
「文句言わない。その代わりご褒美がありますよね?」
「それは、まあ……」
私の頬が勝手に緩む。
最近は人間としてレイミちゃんの生ライブを見ることができているのは私だけということに気づいてしまったので、優越感に浸っている。除霊師をやっててよかったと思う。
『みんな~! レイミのライブに集まってくれてありがとお!』
『『『うおおおお! レイミちゃああん!』』』
狭い廃墟の中にひしめき合う霊共がレイミちゃんの登場に沸く。それだけで昇天する霊もいた。レイミちゃん除霊師としてもやっていけるのでは……。
私もお祓い棒をサイリウム代わりに霊共に負けないくらいの声量で叫ぶ。
「r・e・i・m・i! レイミ! レイミいいい!」
私の隣で、マネージャーさんもサイリウムを振って応援する。
「レイミいいわ! その調子よ!」
最近は毎夜毎夜この調子だ。
楽しい。推しを間近に感じることのできる喜びを。分け合うという喜びを私は知った。まあ、霊共は大半がライブ終わりに成仏しているのだけども。
「ずっとこんな日が続けばいいのに……しーちゃんと夜橋さんと」
ライブ終わりの片づけ中にぽそりとレイミちゃんが呟いた。
私は思わずお祓い棒を取り落とした。
「どうしたのレイミちゃん? そんなこと言って……」
まるでもうすぐお別れの日が来てしまうかのような物言いだ。
レイミちゃんは私を指さした。
私は小首をかしげる。
「夕子さん……元気?」
ああ、レイミちゃんが私の名前を!
「はい! はいはいはい! 元気元気!」
「本当に?」
「ほんとほんと!」
すると、レイミちゃんは私の傍に近づいてきた。
うわあああ、近い近い! 推しが! 触れ合えるほど近くに!
興奮する私とは裏腹に、レイミちゃんは耳元で悲しく呟いた。
「夕子さんの嘘つき……しーちゃん」
「いいのですね、レイミ」
次の瞬間、レイミちゃんの陰に隠れていたマネージャーが私のみぞおちに一撃を入れた。
「な……ん、で?」
私の意識は真っ黒に塗りつぶされていく。
集団不審死事件は一応の収束を見せた。
これもそれも私のおかげだ。
「うーん。まあ、納得はいかないけど、君が悪霊を除霊したって日から集団不審死はなくなったし……上層部もこれ以上捜査をしても無駄だってわかったみたいだしね」
そういうことでお巡りさんから成功報酬の5万円ももらって絶好調の私は、今日もレイミちゃんのライブが行われる廃墟に来ていた。
「なんで交通整理のおっちゃんみたいな仕事を私が……」
ぶつくさいいながら霊共の整列を手伝う私を、同じく霊を誘導していたマネージャーさんが小突く。
「文句言わない。その代わりご褒美がありますよね?」
「それは、まあ……」
私の頬が勝手に緩む。
最近は人間としてレイミちゃんの生ライブを見ることができているのは私だけということに気づいてしまったので、優越感に浸っている。除霊師をやっててよかったと思う。
『みんな~! レイミのライブに集まってくれてありがとお!』
『『『うおおおお! レイミちゃああん!』』』
狭い廃墟の中にひしめき合う霊共がレイミちゃんの登場に沸く。それだけで昇天する霊もいた。レイミちゃん除霊師としてもやっていけるのでは……。
私もお祓い棒をサイリウム代わりに霊共に負けないくらいの声量で叫ぶ。
「r・e・i・m・i! レイミ! レイミいいい!」
私の隣で、マネージャーさんもサイリウムを振って応援する。
「レイミいいわ! その調子よ!」
最近は毎夜毎夜この調子だ。
楽しい。推しを間近に感じることのできる喜びを。分け合うという喜びを私は知った。まあ、霊共は大半がライブ終わりに成仏しているのだけども。
「ずっとこんな日が続けばいいのに……しーちゃんと夜橋さんと」
ライブ終わりの片づけ中にぽそりとレイミちゃんが呟いた。
私は思わずお祓い棒を取り落とした。
「どうしたのレイミちゃん? そんなこと言って……」
まるでもうすぐお別れの日が来てしまうかのような物言いだ。
レイミちゃんは私を指さした。
私は小首をかしげる。
「夕子さん……元気?」
ああ、レイミちゃんが私の名前を!
「はい! はいはいはい! 元気元気!」
「本当に?」
「ほんとほんと!」
すると、レイミちゃんは私の傍に近づいてきた。
うわあああ、近い近い! 推しが! 触れ合えるほど近くに!
興奮する私とは裏腹に、レイミちゃんは耳元で悲しく呟いた。
「夕子さんの嘘つき……しーちゃん」
「いいのですね、レイミ」
次の瞬間、レイミちゃんの陰に隠れていたマネージャーが私のみぞおちに一撃を入れた。
「な……ん、で?」
私の意識は真っ黒に塗りつぶされていく。

