「夜橋さん。昨夜は遺体の発見ありがとうございました。それで何か進展はありましたか?」
「…………ないですね。おかえりください」
 翌日訪ねてきたお巡りさんに私は嘘をついて追い返した。
 言えるか。
 レイミちゃんが幽霊で、ライブで幽霊が成仏して、ついでにファンも昇天していたなんて。
 昨日から頭がパンクしそうなのに耐えて、私は1つの結論に達した
 おそらく集団不審死事件の真相は、レイミちゃんのライブに参加した人間のファン達が、集まった霊達に生気を吸い取られてお亡くなりになっているだけ……本人たちは生レイミちゃんに興奮して生気を吸い取られているなどと夢にも思っていなかったに違いない。
 まあ、それを言ったら私がレイミちゃんを除霊する流れになりそうだから言わない。
 推しを除霊するなんて冗談じゃない。断固拒否する。
 でも、成功報酬は欲しい。
 さて、どうすれば押しを守りつつ警察から成功報酬を巻き上げることができるのだろうか?
 笑顔でお巡りさんを見送り、私は後ろ手に扉を閉めて考え込む。
「……被害者は全員悪霊に殺されたってことにして、私が祓ったって言えばワンチャンあるかしら?」
 お巡りさんの話では警察上層部が不審死事件の解決に躍起になっているのだから、事件が収まったとなれば5万程度の報酬を惜しむことはなさそうだ。
 そう、被害者さえ出なければ全てが丸く収まる……はず。
「レイミちゃんを守らなきゃ」
 私はお祓い棒を握りしめ、外に出た。