自分を応援してくれる誰かがいるから頑張れるのかもしれない。
 そう言ったらレイミちゃんは楽しそうに笑った。
「はい! 私は見てくれる視聴者さんや、応援してくれるファンの皆さんがいるから頑張れたんです。夕子さんが私を推して元気をもらうのと一緒です。私は夕子さん達から元気を貰っていたのですよ?」
 やっとわかりましたか? と言われているようでどこかはがゆい。
「それにしても、本当にレイミの守護霊化をしてみせるとは、夜橋夕子さん、あなたは存外すごい除霊師なのかもしれませんね」
 と、言ってくるのは部屋の中で勝手にくつろいでいた黒いスーツに長い黒髪で色白の美人、死神さんだ。
「帰ってくんない?」
「何を言うんですか。今日は待ちに待った収録日です。私はレイミのマネージャーで、今やあなたの同僚ですよ? ……ああ、安心して下さい。死神は食べ物は食べませんし、排泄もしません。幽霊みたいなものです。お気になさらず」
 と言いつつ、スーツで畳をごろごろするのはやめていただきたい。
 クリーニング代ださないからね?
「あ、夕子さん! そろそろ配信の時間です! 準備をお願いしてもいいですか?」
「はいはい。えっと……このマイクとカメラを……こうするんだっけ?」
「はい! ありがとうございます! それで大丈夫です!」
 にこっとレイミちゃんが微笑む。
 私の守護霊になった彼女は毎日のようにその笑顔を見せてくれるようになった。
 正直、ドキドキしすぎて心臓が持たない。
 推しとの生活なんて夢みたいだ。
「まあ、すぐ慣れますよ。そしていずれは倦怠期夫婦のように……」
「黙ってくれない死神?」
「ああ、二人とも配信始まってますよ! ほら、並んでください!」
 レイミちゃんに促されて私たちはカメラの前に並ぶ。
「こんばんは~! 幽霊のレイミと」
「死神のしーちゃんと!」
「じょ、除霊師の夕子で~す」
 それにしても何故こうなったのだろうか。
 私は推す側でよかったのに……。
「それでは! 私達の結成記念最初の一曲を聞いてください!」
 本当、なんでこうなってしまったのだろう。
 推しと一緒にネットアイドルとして活動する日々が始まるなんて。
(了)