すし詰め状態の亡者共がレイミちゃんの歌に合わせて成仏していく。
一曲が終わるごとにその数は少なくなっていき、0時近くになるとほとんどの霊が姿を消していた。ああ、私も成仏しそう……レイミちゃんの歌と声はやっぱり元気になるわ~。
人魂のスポットライトを浴びて壇上で最後の曲を歌い終えたレイミちゃんは、会場を見回し、アイドルの顔で、私達に語り掛けた。
「みんな~! こんばんわ~! 突然ですが! 私、レイミから重大発表があります!」
「だめ! レイミちゃん言わないで! あなたがいない世界なんて私、耐えられないから!」
ファンとして壇上には上がらずに叫ぶ。
レイミちゃんは私を見て一瞬悲し気な笑みを見せるも、すぐにアイドルとしてのきらめく笑みを取り戻した。
「私、レイミは実は幽霊でした~! 人間だと思っていた方はごめんなさい! でもね、私、それだけ皆に笑顔になってもらいたかったの。だけどそれも今日でおしまい」
レイミちゃんは笑顔だ。声も明るい。だけど、泣いているのが私にはわかった。レイミストは、いや、夜橋夕子はレイミちゃんを最初から見ている大ファンだから。
「やめないでええ!」
全身全霊で叫ぶ。だけど、それは届かない。
「今日の0時をもって、私レイミは成仏させていただきます! 今まで応援ありがとー! 応援してくれたファンの皆。支えてくれたマネージャーさん。そして今この場にいるお客さん! 私、本当に幸せだった。死んじゃったのにみんなの笑顔が見れて……うれしかった。大好き!」
その言葉と共にレイミちゃんの瞳からボロボロと零れ落ちる涙。
アイドルが引退する時、よく泣いている映像をみるけど、あれは嘘泣きだと自分勝手に思っていた。でも、実際に推しが、レイミちゃんが今目の前で泣いているのを見ると分かる。その涙は本物だ。うれしいだけじゃない。別れのつらさやまだ辞めたくないという気持ちがないまぜになってあふれ出ているのだ。
こっちが見ていてつらいほどに、それは純情で、どうにかしてあげたい気持ちが沸き上がる。
人魂のスポットライトが消えた。
廃墟の中に闇が訪れる。月明かりだけが辺りを照らす。
レイミちゃんはアイドルの仮面を脱ぎ、声を殺して泣き始めた。
「まだ、成仏したくないよ……わたし、もっとみんなを笑顔にしてあげたかった……のに」
月明かりに照らされるレイミちゃんの体が空気に溶けるように薄くなっていく。
私は壇上に上がった。推しに無断で触れるのはファンとして失格だ。だけど、そんなことを言っている場合じゃない。レイミちゃんが消えてしまう。
「レイミちゃん、消えちゃダメよ! もっと未練に執着して! 私、除霊師だからわかるの。そうやってこの世に残り続けている霊はたくさん……」
「それはだめです」
闇の奥から大鎌を携えて静かに死神が現れた。
「どうしてよ! あんたレイミちゃんを消したいの!? 成仏したらもうレイミちゃんの歌は、底抜けに明るい声も聴けなくなるのよ!」
「それは嫌です。でも、レイミは私と……死神と約束をしてしまいました。大勢の前でライブをしたい。みんなを笑顔にしたい。人間も霊もレイミは沢山幸せにしました。だから成仏しないといけません。未練を叶えてまだ残り続ける霊は悪霊として処分する決まりになっています」
大鎌をレイミちゃんに向ける死神。レイミちゃんはわかっていると言わんばかりに動かない。
その体はどんどん透けて、消えかかっている。
どうすればいいの? どうすれば……。
除霊師として霊を除霊することはあっても救ったことはない。他に私ができることといえば霊と話すことと、守護霊をつけることくらいで……。
「!? ああ! まって! まって死神! ある! レイミちゃんを成仏させなくていい方法あるから!」
私は今まさに大鎌でレイミちゃんを処刑しようとしていた死神をお祓い棒でぶっ叩いた。
一曲が終わるごとにその数は少なくなっていき、0時近くになるとほとんどの霊が姿を消していた。ああ、私も成仏しそう……レイミちゃんの歌と声はやっぱり元気になるわ~。
人魂のスポットライトを浴びて壇上で最後の曲を歌い終えたレイミちゃんは、会場を見回し、アイドルの顔で、私達に語り掛けた。
「みんな~! こんばんわ~! 突然ですが! 私、レイミから重大発表があります!」
「だめ! レイミちゃん言わないで! あなたがいない世界なんて私、耐えられないから!」
ファンとして壇上には上がらずに叫ぶ。
レイミちゃんは私を見て一瞬悲し気な笑みを見せるも、すぐにアイドルとしてのきらめく笑みを取り戻した。
「私、レイミは実は幽霊でした~! 人間だと思っていた方はごめんなさい! でもね、私、それだけ皆に笑顔になってもらいたかったの。だけどそれも今日でおしまい」
レイミちゃんは笑顔だ。声も明るい。だけど、泣いているのが私にはわかった。レイミストは、いや、夜橋夕子はレイミちゃんを最初から見ている大ファンだから。
「やめないでええ!」
全身全霊で叫ぶ。だけど、それは届かない。
「今日の0時をもって、私レイミは成仏させていただきます! 今まで応援ありがとー! 応援してくれたファンの皆。支えてくれたマネージャーさん。そして今この場にいるお客さん! 私、本当に幸せだった。死んじゃったのにみんなの笑顔が見れて……うれしかった。大好き!」
その言葉と共にレイミちゃんの瞳からボロボロと零れ落ちる涙。
アイドルが引退する時、よく泣いている映像をみるけど、あれは嘘泣きだと自分勝手に思っていた。でも、実際に推しが、レイミちゃんが今目の前で泣いているのを見ると分かる。その涙は本物だ。うれしいだけじゃない。別れのつらさやまだ辞めたくないという気持ちがないまぜになってあふれ出ているのだ。
こっちが見ていてつらいほどに、それは純情で、どうにかしてあげたい気持ちが沸き上がる。
人魂のスポットライトが消えた。
廃墟の中に闇が訪れる。月明かりだけが辺りを照らす。
レイミちゃんはアイドルの仮面を脱ぎ、声を殺して泣き始めた。
「まだ、成仏したくないよ……わたし、もっとみんなを笑顔にしてあげたかった……のに」
月明かりに照らされるレイミちゃんの体が空気に溶けるように薄くなっていく。
私は壇上に上がった。推しに無断で触れるのはファンとして失格だ。だけど、そんなことを言っている場合じゃない。レイミちゃんが消えてしまう。
「レイミちゃん、消えちゃダメよ! もっと未練に執着して! 私、除霊師だからわかるの。そうやってこの世に残り続けている霊はたくさん……」
「それはだめです」
闇の奥から大鎌を携えて静かに死神が現れた。
「どうしてよ! あんたレイミちゃんを消したいの!? 成仏したらもうレイミちゃんの歌は、底抜けに明るい声も聴けなくなるのよ!」
「それは嫌です。でも、レイミは私と……死神と約束をしてしまいました。大勢の前でライブをしたい。みんなを笑顔にしたい。人間も霊もレイミは沢山幸せにしました。だから成仏しないといけません。未練を叶えてまだ残り続ける霊は悪霊として処分する決まりになっています」
大鎌をレイミちゃんに向ける死神。レイミちゃんはわかっていると言わんばかりに動かない。
その体はどんどん透けて、消えかかっている。
どうすればいいの? どうすれば……。
除霊師として霊を除霊することはあっても救ったことはない。他に私ができることといえば霊と話すことと、守護霊をつけることくらいで……。
「!? ああ! まって! まって死神! ある! レイミちゃんを成仏させなくていい方法あるから!」
私は今まさに大鎌でレイミちゃんを処刑しようとしていた死神をお祓い棒でぶっ叩いた。

