その言葉を聞いた途端、頭がぐるぐるして、どうしたら良いか分からなくなって、目を見開きながら思いっきり下を向いた。そのタイミングで少し大きめな波が来てスカートがべちゃべちゃになった。

 私は言葉にも波にも驚いて、なんだか面白くなって笑った。

 大和も一緒に笑いながら、彼が首に掛けていたタオルで優しく私の顔に付いた水滴を拭いてくれた。

「わぁ! ごめんね!」

「こういう時は、ごめんねじゃなくてありがとうだよ!」

 拭いてくれている大和と見つめあった。
  
「ありがとうございます。そしてお付き合いよろしくお願いします!」

 私は丁寧にお辞儀をした。

 同窓会で再会してから、2年半がたった夏の日だった。


 それから同棲するまでには時間がかからなかった。


 大和にアドバイスを貰いながら合わなくて辛いと感じていた保険を販売する仕事を辞めて本屋の店員に転職した。

 私の中ではそれらは、とても大きな冒険だった。

 大和がいなければずっと流されるように、何も変われないままでいたんだろうなぁ……。