#平行線の世界を知るきっかけ


 美月から夢の話を聞いたとき、本当に僕がただ過去に戻ってやり直しているだけなのか、ちょっと疑問に思った。

 多分、美月の見た夢は僕が過去に戻る前、実際に彼女自身に起こった出来事。

 ひとりで、そのことを考えながらドライブをしていると、いつの間にか、あの時の美月がいなくなってしまった海に来ていた。

 そしてスカーフが落ちていた場所でもういちど、なんとなく横になってみることにした。

もう何も起こらない気がするけれど……。

 いつの間にか眠っていた。

 起きると自分の部屋の机に顔を伏せて寝ていた。しばらくそのまま、ぼーっとしていたけれど、さっきまで海にいたことを思い出して、慌てて顔をあげた。

「また? うそだろ……」

 まずは鏡を見る。自分の姿は何も変わっていない。

 部屋の様子も特に変わりはない。

 日付や今日の天気もそのまま。

「過去には戻っていないのか…もし戻っていたらまた人生やり直さないといけなかったな。今まで積み上げてきたことが……」

 そう呟きながらリビングに出てみると

美月が選んで買ってきた、花柄のクッションやうさぎの置物など、彼女が好きな可愛らしいものが全てなくなっていた。

…………美月と一緒に暮らしていた形跡は何もなかった。

「 えっ?」

 リビングはシンプルな家具や雑貨でまとめられていた。

 この感じ……過去に戻る前そのままだ。