#記憶の夢


 美月と蒼空、それぞれから夢の話を聞いた。
 実は僕も同じ夢を何回も見ている。

 大人になった美月がその夢に出てくる。

 夜、美月から電話が来て、今からあの海に連れて行ってと突然お願いされる。

 移動中、車の中で蒼空の名前を呟きながらずっと泣いている。

 海に着いてからも泣いているのでとりあえず、すぐ近くにある駐車場に車を停めた。

 しばらくすると、美月は疲れて助手席で眠りについたので、少しだけ眠ろうと思い、僕も運転席で一緒に眠った。

 起きると隣にはいなくて、心配になり急いで車を降り探した。

 海の方へ行くと、美月のスカーフだけが砂浜に落ちていた。

「美月…ごめん……」

 満月の光が海に反射してキラキラ輝いている夜だった。

 この夢は、夢ではなく平行線の世界で起こった現実。僕があの世界でいちばん強く残っている記憶。