★蒼空・謝る


「夢の中で美月ちゃんと喧嘩して、とても傷つけてしまうんだ。その夢を見た後、必ず後悔する気持ちになる……」

 この話をした途端、胸の辺りがぎゅっと痛く、苦しくなるのを感じたけれど、そのまま話を続けた。内容をすみずみまで細かく話した。

 彼女は俺の頼んだコーヒー辺りに視線を向け、何かを考えている様子だった。

「そうだったんだ……」

 彼女は俺の話した内容にふれてこなかった。
 謝るタイミングはなく話題は変わり、小中学時代の話や最近話題のニュースの話などした。

 あっという間に時間は過ぎた。

「外暗くなってきたね。バスで来たんだよね? 帰り送るよ」

「いや、結構です」
 全力で手をぶんぶんして断ってきた。

「断られると思っていたけれど、寒いし。それに誘ったのこっちだし」

 何度も同じような会話のやりとりをして

「じゃあお願いします」
と、やっと言ってくれたので送ることにした。

 20分ぐらいで美月のアパート前に着いた。

「送ってもらって、ありがとうございました」

「こちらこそありがとう」

 彼女がシートベルトをはずし、助手席から降りようとした時、車から降ろしたくないと思ってしまった。

 本能が早く謝れと叫びだした。

「……あのさ!」

「えっ?」

「ごめんなさい!」

 すると勝手に涙と、言葉が溢れてきた。

「夢の中で傷つけて本当にごめんなさい。すごく会いたくて、謝りたくて。ただの夢かも知れないのに」

「謝らないで……こちらこそ、ごめんなさい」

 微笑みながらそう言うと、ふわっと車から降りていった。

 なんだかこのまま別れると、何故かもう会えない気持ちになり、自分も急いで降りて彼女を追いかけ抱きしめた。