この国は城を中心として栄えている。
城内は広く、王城だけでなく図書館や騎士団の宿舎もあり王族以外にも開放されたエリアがある。特に図書館は庶民にも広く開放され、開館時間内なら誰でも出入り可能だ。今の王様が庶民にも平等な教育を推奨するために始めたことらしい。

これは司書である私としては絶対押さえておきたい場所だ。

図書館は思ったよりも大きく立派な建物で、庶民に開放されているといっても訪れる人はそれほど多くはない。

ひとたびそこに足を踏み入れると独特な香りがほのかに鼻をかすめ、私はそれを思い切り吸い込む。

インクの香り。
紙の香り。

ああ、図書館だ、落ち着く。

ところ狭しと本が並べられ、それは天井まで続く圧巻だ。ウィズラブの世界にもこんな立派な図書館があったなんて、驚きと感動で胸がじんとした。

この図書館はジャンルごとの仕分けはされているが、それ以上の分類には分けられていないようだった。そのため、少し煩雑に感じられた。

(分類番号付けて整理整頓したい)

職業病だろうか、そんな風に思ってしまう。

次の角を曲がるとき、ちょうど向こう側から歩いてきた人とぶつかりそうになった。