「あなたがシャルロットと恋人になったとき大反対したのは、あなたたちが兄妹だからなの。今まで隠していてごめんなさい。そしてアズール隊長、あなたまで巻き込んでごめんなさい。シャルロットの婚約者に仕立て上げたのはそういう理由からなんです」

お母様の長い話を聞いた私たちは、思い思いに考え、しばらく黙った。

といっても私はシャルロットの姿でありながら菜子なので、お母様の話をなるほどと感心したし、私の知っている本の内容から大幅にずれていることに不思議な気持ちでいた。やはり私がこの世界に来たことで未来が変わってきているんだと実感する。

「お母様、私、記憶喪失なんです。だから王様と結婚するのを反対しません」

ニコリと微笑むと、お母様の瞳が大きく揺れる。

「王女様」

「こほん。母さん、息子の俺の気持ちは尊重してくれないのかな?」

おとなしく話を聞いていたジャンクが方眉を上げながらわざとらしく咳払いをする。

「ジャンク」

「もっと早く教えてくれていたらよかったのに。驚きはしたけど、別に俺は反対しないよ。母さんの幸せが俺の幸せだから」

ジャンクはお母様の手を取ると、柔らかく微笑んだ。それはとてもあたたかくてジャンクの優しさが滲み出ているようだ。本当にジャンクは聞き分けのいい、いいやつだ。見ているだけでこちらまで幸せな気持ちになる。

「よかったね~」

私が呟くも、なぜかアズールだけがムスッとした顔をしていた。

そうか、アズールはシャルロットの婚約者に仕立て上げられたんだもんね。怒るのも無理はない。

「アズール隊長、迷惑かけてすみませんでした」

お母様が頭を下げると、アズールはほんの少し表情を緩める。文句のひとつでも言うのかと思いきやお母様と王様の仲を祝福した。

「今後はいろいろ誤解なきよう、王様と表立ってお付き合いされますことを望みます」

一見クールな受け答えだが、私にはアズールの優しさが感じられて胸が熱くなった。