「大した王女様じゃない。まさかあなたの方から私を訪ねてくるとは思わなかったわ」

お母様は私たちのやり取りを見てクスクス笑いながら、魚と野菜を鍋に投入した。

「その様子だと、騎士隊長様も私と王のことを知っているのね」

疑われているのにお母様は終始穏やかだ。
何もやましいことはない、そんな自信に溢れている気がする。

「ちょうどいいわ。ジャンクにも話しておかなくてはね。それから騎士隊長さん、あなたは王女の婚約者ですものね」

ドキッと心臓が跳ねた。
アズールはシャルロットの婚約者だけど、今の私はナコだ。
アズールは何て答えるの?

ドキドキと心臓が高鳴る中、アズールは淡々と「はい」と返事をした。

そうだよね、その方が好都合だもんね。
私はこんな時に一体何を期待しているのだろう。

お母様は軽く頷き、「あなたにも聞く権利があるわ」と告げた。

「私は王の恋人だった。あの人は私を王妃に迎えてくださるつもりだったの。でも先代の王が魔女を嫌う方でね、別れさせられてしまったのよ。だけどその後に私は身籠っていたことがわかったの。それがジャンク、あなたよ。」

「え、俺の父さんは幼い頃に亡くなったって……」

「ごめんね、亡くなったのは嘘。あなたの父親は国王様よ。そして王は数年後、魔女ではない別の女性と結婚した。そして生まれたのがシャルロット」

私とジャンクは顔を見合わせる。
お互いにわかには信じがたい、けれど本当かもしれないという思いも渦巻いた。
王は白髪はあるけれど紛れもない金髪。
シャルロットとジャンクも同じ金髪なのだ。

以前ジャンクが言った。

──シャルロット、君といると何だか落ち着く。波長が合うのかな?

そんな感覚に陥ったこともある。
ジャンクと父親が同じなら血を分けた兄妹なのだ。通じるものがあってもおかしくはない。