その時、突然バンっと扉が開いた。

「ナコ!大丈夫か?」

「あ、アズール?」

息を切らし血相を変えたアズールが慌てて私の元へ駆け寄ってくる。突然のことに驚いて私は目をぱちくりさせた。

「えっ?アズール様?」

驚いて椅子からずり落ちそうになっているジャンクはすっとんきょうな声を出した。
アズールの手が剣に伸びたのを見て、私は慌ててその手を押さえる。

「アズール待って。違うのよ。魚だから!」

「は?魚?」

「ほら」

私の指差す先。
キッチンのまな板の上では大きな魚が真っ二つに切れているにもかかわらず、僅かにまだ動いてまわりの水を跳ねさせている。

「ごめんなさいね。大丈夫だったかしら?」

「平気です。すごく活きのいいお魚ですね」

私とお母様は顔を見合わせると、ふふっと笑った。

「まあいいから、座って」

促すと、アズールは不満そうな顔をしながら私とジャンクの間に割って入る形で腰を下ろした。そして私を睨み付けてくる。

「説明してもらおうか?」

その声はひどく冷たく、私の身を縮ませるには十分な迫力だった。
これは、怒ってるよね?

「私が盗賊に絡まれていたところを、お母様が助けてくださったの」

確かさっきもジャンクに同じ事を説明した。ジャンクは無事でよかったなんて優しい言葉をかけてくれたけど、アズールは無言のまま私を睨む。

「深追いするなと言ったはずだ。そもそも城を飛び出して行くなんて王女としてあるまじき行為だろう。無事だったからよかったものの、自覚を持ってくれといつも言っている」

「う、ごめんなさい」

アズールが激おこだ。
さすがに私もしょぼんと項垂れた。