少しばかり打ち解けると、ナコは気の抜けた返事をした。

「頭ナデナデか、ぎゅってハグしてもらうか。どっちがいいかな」

……いや、もうお前は何を求めているんだ。

「重要なことでしょう、推しに頭ナデナデとかキュン死レベルよ!」

だいたい、“おし”とか“きゅんし”とか、ナコの口から出てくる言葉が理解できない。
だけど俺は彼女の頭に手を置いた。ゆっくりと撫でてみる。さらさらとした髪の毛が気持ちよかった。

これはほんの出来心だ。

「ひえええ!」

ナコは変な悲鳴を上げ、真っ赤になって両頬を押さえた。自分で望んでおきながらこんなに照れるなんてどうかしている。

「尊いです!」

これが尊いとはどんな意味で受けとればいいのだろう?もう完全に俺の負けだ。

「変なやつ」

笑ったら、ナコもくしゃっと笑った。
シャルロットとは違う、“ナコ”がそこに存在していた。