シャルロットの頬にほんのり赤みがさし、そしてゆっくりと目が開く。

「……誰?」

シャルロットは俺を見て不思議そうに呟いた。そこには先程まで向けられていた俺に対する敵意は微塵もなかった。

俺は言葉を失って驚愕の目でシャルロットを見る。血は一滴すら流れていない。

そうこうしているうちに俺の声を聞き付けた衛兵たちがわらわらとやってきた。

「隊長?どうかされましたか?シャルロット様?」

誰もシャルロットがテラスから落ちたところを見ていなかったようだ。

それは好都合だ。王女がテラスから身投げしたなどとなれば大問題だし、ましてや一度死んだが息を吹き替えし大量の血も消えたなどと、この光景を見て誰が信じようか。

俺は痛そうにしているシャルロットを抱えた。とにかく城の中へ運ばねばなるまい。

「うわあ、かっこいい。お姫様抱っことか萌える!夢なのかなぁ?」

あんなに俺を拒んでいたシャルロットはそう呟くと、いとも簡単に大人しく俺に身を預けた。

俺は何が起きているのかまったくわからなかった。
だが一瞬そこに、昔のシャルロットを垣間見た気がして胸が高鳴った。