「ジャンクとの仲を咎められて身投げしたのだ。すぐに駆けつけた俺が頭から血を流し息をしていないのを確認した。だが他の者が来る前にシャルロットは息を吹き替えした。あんなに溢れていた血は跡形もなく消え去った」

アズールはその時を思い出すかのように自分の手のひらを見る。確かに私がこの世界で気がついたとき、血なんて一滴も流していなかったし、かすり傷ひとつついていなかった。

「目を覚ましたお前は記憶喪失になっていた。皆がそれを受け入れ、シャルロットが生きていてくれてよかったと喜んだ。だが俺には信じられない。あれは俺だけが見えた幻想なのか?お前は誰なんだ?なぜシャルロットの体を乗っ取っている?」

アズールはゆっくりと剣を抜くと私の喉元に突きつけた。

「返答しだいでは殺す」

目の前でキラリと剣が光る。
手入れの行き届いた剣はいつでも私を殺す気満々だ。

剣先が触れそうで触れない。
その僅かな距離に私は息を飲んだ。

何をどうあがいても、この状況を打破する糸口は見えない。正直に言ったところで信じてもらえるかどうか微妙なところだ。だからといって下手な嘘をついたらすぐに殺されるんだろう。それくらい、アズールの目は本気だ。