胸がきゅんっと音を立て、ドキドキと鳴り出した鼓動が止まらなくなる。

「僕を選んでよ、シャルロット」

私は抵抗することも忘れ、何も言葉を紡ぎ出すこともできなかった。

ぼんやりとしながら城に帰ると、今日に限ってばったりとアズールに出会ってしまった。
あんなことがあって私の注意力が落ちていたのだろう。

「勝手にどこに行っていた?侍女はどうした?」

大層不機嫌に眉を吊り上げながら、相変わらずの冷たい声で私を咎める。

「図書館に行っていただけよ」

「あの男のところか?」

「別にそんなんじゃないし」

「彼は優秀だからな、学ぶことも多い。だが所詮は庶民だ、深く関わらないでいただきたい」

「庶民って、そんな言い方ないでしょう?」

「お前は王女なんだ、その自覚を持つべきだと何度も言っている」

「王女なら庶民のことを知ることはいいことだわ。ほんっと、アズールったら分らず屋!」

私は吐き捨てると逃げるように自室へ入った。パタンと閉まる扉に背を預け、ずるずるとその場にしゃがみこんだ。

私は頭を抱える。
ケンカしたいわけじゃないのにどうにも上手くいかない。何だか自己嫌悪だ。

私の立ち回りで夢小説みたいにするぞなんて決意したわりに、今のところ全然良い展開になっていない。むしろジャンクと仲良くなってるし。これだと小説通りになってしまうのでは?

ああ、何を間違えたんだろう。
自分の書く夢小説がいかに夢かよくわかる。
この状況がもどかしくてたまらない。

私はジタバタとベッドの上を転がった。
無駄にふかふかのベッドだけが私を優しく包み込んだ。