毎日こっそり城を抜け出し、私は着実にジャンクと親交を深めていた。

というより、図書館の運営に携わることができて嬉しいのだ。自分の存在意義を見出だせているようで充実した毎日を送れている。

もう何度目かの図書館。
ジャンクはアズールがいないのを確認すると、ふいに私の髪を掬って毛先にキスを落とした。

「ねえシャルロット。記憶がなくなって僕は今でも変わらず君が好きだよ」

決して強要しない、ただ甘い言葉は私をまろやかに包み込んだ。思った以上に自分の体温が上がっていくのがわかって焦る。

「ジャンク、でも私は……」

言葉に詰まると、ジャンクは静かに首を振る。

「わかってるよ、アズール様のことが好きなんだよね。僕の気持ちもちゃんと伝えたかっただけ。困らせてごめんね」

そう言って、優しく私の髪を撫でた。
その手付きすらも甘くて優しく、胸がきゅんとなった。

ジャンクは本当に物腰柔らかで優しい。
きっとシャルロットはそんな優しさに惹かれたんだろうな。

でもごめんね、私はシャルロットじゃなくて菜子なの。
菜子の推しはアズールなの!

とはいうものの、アズールはずっと冷たいままだ。図書館に行くのを反対されて以来、私たちの関係はギクシャクしている。
現状打破するにはどうしたらいいんだろう。

窓辺にもたれ掛かって外を見る。
澄んだ青空とは対照的に、自分の心は曇っていくように感じられた。

「アズール様はシャルロットを大切にしてくれてる?」

「王女としては護られてるよ。でも女性としては見てくれてないかな」

自虐的に肩をすくめながら言うと、ジャンクの顔が険しくなった。そして私をじっと見つめる。突然腰をぐっと引かれ、私は前のめりになった。

「やっぱり僕がシャルロットを幸せにしたい」

ジャンクは私の耳元でそう囁くと、そのままぎゅっと抱きしめた。