カギが開けられドアが開いた。
 現れたのは中年で小太りの男、領主のザロモだった。
 ザロモは脂ぎった顔で、几帳面に整えたひげを指先でいじりながら、ベッドのユリアを見下ろす。
「りょ、領主様……」
 ユリアはあわてて立ち上がった。
 ザロモはユリアが大聖女として選ばれた時、まるで自分のことのように喜び、いろいろと良くしてくれた男だった。ユリアはホッとしてザロモに微笑む。
 ところが、ザロモはカツカツとユリアに近づくと、手のひらでユリアのアゴを持ち上げ、じーっとユリアの顔を眺める。
「りょ、領主様?」
 ユリアは朝に切った頬の傷が痛み、顔を歪めた。
「お前、大変なことをしてくれたな……」
 ザロモはそう言うとユリアを鋭い目でにらんだ。
「えっ!? 今回の事は公爵派の陰謀です! 私は利用されたのです!」
 味方になってくれると思っていたザロモににらまれ、ユリアは焦る。
「ジフの街の代表として、お前を大々的に王都に送り込んだ俺の顔に泥を塗りやがって!」
 ザロモはそう言うとユリアをベッドに突き飛ばした。
 きゃぁ!
 後ろ手に縛られたままのユリアはなすすべもなくベッドに転がった。
「お前の身体で払ってもらうしかないな……」
 ザロモはユリアに近づき、ブラウスに手をかけると、一気にビリビリと音を立てながら引き裂いた。
「いやぁ! やめてぇ!」
 必死に逃げようとするユリアだったが、後ろ手に縛られていてうまく逃げられない。
「貧相な身体だな。揉んで育ててやろう。暴れるんじゃねーぞ」
 ザロモはいやらしい顔でスカートをたくし上げると、ショーツに手をかけた。
「や、止めてください! いやぁぁぁ!」
 ベッドの上を必死に逃げるユリア。

 パン!
 ザロモはユリアの頬を平手打ちした。
「おとなしくしてろ! お前なんてもう男を喜ばせるくらいしか使い道が無いんだ」
 ユリアはあの優しかった男の豹変(ひょうへん)に驚き、そして、自分はもう娼婦同然なのだという言葉に涙が止まらなくなる。
 堕ちるところまで堕ちてしまった……。
 ユリアはその理不尽な運命を呪った。













1-5. 不可思議な青年

 泣きぬれるユリアをいやらしい笑みで見下ろすザロモ。
 そして、彼はショーツを力任せに引っ張り、ビリビリと破きながらはぎ取った。

「いやぁ!」