パジャマを着たジェイドが部屋に戻って来て聞く。

「え? 今夜……も?」
 うつらうつらしていたユリアは驚いて目を見開く。
 もちろん、ジェイドはドラゴン、自分をどうこうしようとする意図なんてないだろう。しかし、自分は十六歳の純潔の乙女なのだ。一緒に寝てるなんてことを誰かに知られたら……。
「どうした?」
 ジェイドは悩んでるユリアに聞いた。
「一緒に寝てること……、誰かに知られたらまずいかな……って……」
 モジモジしながらユリアが答えると、
「じゃあ、二人の秘密にしよう」
 そう言ってニコッと笑う。
「ひ、秘密って……。そ、そうじゃなくて!」
 秘密にしたらすべて解決……な訳ではない。
 若い男女は一緒に寝ちゃいけないことをどう説明したらいいのか……。
「大丈夫、誰にも言わない」
 ジェイドはまっすぐな目でユリアを見る。
「あー! もぅ! 間違いがあったらどうするのよ!」
 ユリアはイライラして叫んだ。
「間違いって?」
 ジェイドはキョトンとする。
「ま、間違いっていうのは……そのぅ……」
 ユリアは説明しようとして固まってしまった。
 そして、みるみるうちに真っ赤になり、頭から湯気が上がる。
 ユリアは目をつぶってブンブンと首を振り、大きく息をついた。

 よく考えればジェイドから迫られることはないだろう。彼のユリアを見る目はまるで妹を見るような優しい目で、異性に向けるようなまなざしではないのだ。
 で、あれば、ユリアから迫らない限り間違いなど起こりようがない。
 なんだ、大丈夫……。そう思いかけた時、ふと、ジェイドの厚い胸板の感触がよみがえり、顔がボッと真っ赤に染まった。

 うそ……。
 一体自分は何を考えているのか?
 ユリアは自分に自信が持てなくなってしまう。

 スゥ――――、……、フゥ――――。
 スゥ――――、……、フゥ――――。

 ユリアは深呼吸を繰り返した。
 やがて眼がトロンとしてきて、雑念は消え去っていく。
「どうした? 大丈夫か?」
 ジェイドはユリアの行動に心配になって声をかける。
「大丈夫、一緒に寝ましょう」
 賢者となったユリアはうつろな目でほほ笑んだ。














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