ユリアは目を真ん丸くして言葉を失った。生まれてからずっと親しんできた、自分の一部ともいえる魔法。それは大いなる自然の摂理の一環だと思っていたら、誰かに作られたものだと言う。
 一体この世界はどうなっているのか? 知られざるこの世のカラクリの裏を垣間見たユリアはブルっと震え、背筋に悪寒が走った。

「だ、誰が……導入したの?」
 ユリアは恐る恐る聞く。
「うーん、説明が難しいな。そのうち……会えるかもね」
 ジェイドは眉をひそめながら言った。

 魔法を作った存在、それはもはや神と言えるような存在だろう。一体どんなお方なのだろう……。
 ユリアはゆっくりとうなずき、今まで想像もしたことのなかった新しい世界観を、どうとらえたらいいのか困惑していた。








1-11. 賢者となったユリア

 日も暮れて、昨日より少しやせた月が昇ってくるのをユリアがボーっと見ていると、ジェイドが料理と食器をプレートに入れて持ってきた。
「今日は照り焼きにしてみた」
 そう言ってニコッと笑う。
「うわぁ! 美味しそう!」
 ユリアは目を輝かせて湯気の上がる大きな肉の塊を見つめた。
 ジェイドは皿に肉を盛ってユリアに渡す。
「どうぞ」
「ふふっ! ありがと!」
 ユリアは受け取るとフォークで口に運ぶ。
 そして、目を大きく見開くと、
「美味し~!」
 と、言って、目をギュッと閉じて首をフルフルと振った。

 気を良くしたユリアはリンゴ酒を何杯かおかわりしながら、上機嫌で魔法の魅力を語り、肉料理をモリモリと食べる。
 そんなユリアを、ジェイドは微笑みながらうんうんとうなずいて聞いていた。

 絶好調に盛り上がり、すっかり満足したユリアは、
「うーん、お腹いっぱ~い!」
 と、言ってベッドにダイブする。

「歯を磨かないとダメだぞ」
 そんなユリアに声をかけるジェイド。
「だいじょぶ、だいじょぶ、それ~! 生活浄化(クリーナップ)!」
 ユリアはそう叫んで手を上にあげた。
 すると、ユリアは光に包まれていく。
 そして、光が消えた後にはツヤツヤでさっぱりとしたユリアが満足げに横たわっていた。
「さすが大聖女……」
 ジェイドは感心しつつも釈然としない様子で、だらしなく転がる幸せそうなユリアを眺めていた。

        ◇

「今夜も添い寝でいいな?」