ユリアは少し酔いが回ってきたのかそんなジェイドをボーっと見つめる。凛とした切れ長の目にシュッとした高い鼻……、見れば見るほど美形なのだ。そして細く長い指……。あれがさっき胸を這っていた、温かな指先……。
「えっ!?」
 なぜそんなことを思い出してしまったのか、ユリアはポッと頬を赤らめてブンブンと首を振った。

「どうした?」
 ジェイドは心配そうにユリアの顔をのぞき込む。

「な、な、な、何でもないわ!」
 ユリアは両手を振って全力で否定する。
 そして、リンゴ酒をゴクゴクと飲んだ。
 ジェイドはそんなユリアを不思議そうに眺める。

「し、神聖力、と、取り戻してくれてありがとう……」
 ユリアはちょっと伏し目がちに言った。
「あんな封印をするなんて許し難い連中だ」
 ジェイドは眉をひそめ、自分の事の様に怒る。
「ありがとう……」
「王都を焼き払うか?」
 ジェイドは恐ろしい事を平然と言う。
「あ、いや、悪いのは一部の人だけだから……」
 ユリアは驚いて否定する。
「では、そいつらに復讐するか?」
 ジェイドは瞳の奥を真紅にゆらりと光らせた。
「だ、大丈夫。誰にどう復讐したらいいのかもわからないし、復讐したからと言って元には戻らないわ……」
 ユリアはため息をつき、うつむく。
「このままでいいのか?」
「うーん、なんか疲れちゃった……。しばらくはここでゆっくりさせて欲しいの」
「そうか……。我は構わない。好きなだけここで暮らすといい」
 ジェイドは真剣なまなざしでユリアを見つめた。
「ありがとう……」
 目をつぶりしばらくユリアは何かを考える……。
「私……神聖魔法しか使えないからここでは役に立てそうにないの。それでもいい?」
「別に何もしなくていい。ただ、ユリアに使えない魔法なんて無いぞ」
「へ!? だって、私、神聖力しかないわよ?」
「それが原因だ。『使えない』と思ってるから使えないだけだ」
「え――――!? そんなことって……あるの?」
「明日、使い方を教えてあげる」
 ジェイドは優しく微笑む。
「そ、そう……」
 ユリアは半信半疑で静かにうなずいた。











1-9. 温かい安らぎ

「ユリアはベッドを使って」
 食後にジェイドが片付けながら言った。
「ダ、ダメよ! 私は床で寝るわ!」
「ふふっ、我は龍となり広間で寝るから気にするな」