「封印の魔法陣が貼られていた」
 ジェイドはそう言って、剥がした封印のシールに火を吹きかけた。シールは一気に燃やし尽くされ、紅く輝く火の粉がパラパラと舞う。
「これでもう安心だな」
 ジェイドは微笑んだ。
 しかし、ユリアはジェイドをジト目でにらむ……。
「どうしたんだ? 嬉しくないのか?」
 ジェイドは不思議そうに聞く。
「嬉しいわよ! でも……、やり方ってものがあるわよ!」
 口をとがらせて言う。
「何がマズかった?」
「乙女の身体に勝手に触っちゃダメなの!」
「そうか……」
「そうよ!」
 ユリアは腕組みをして、キッとジェイドをにらんだ。
「……。分かった。二度と……触らないと……誓うよ」
 しょんぼりしてうつむくジェイド。
 そのしょげっぷりを見てユリアは言い過ぎたと思った。やり方はともあれ、純粋に善意で神聖力を取り戻してくれたのにお礼も言っていない。
 それにあの指先の温かさは、不思議に不快ではなかったのだ。むしろ……。
「あ、いや……絶対に触るなって……言ってる訳じゃ……ないのよ?」
 ユリアは真っ赤になって言う。
「触ってもいいのか?」
 ジェイドはキョトンとする。
「じゅ、順序っていうものを守ってってだけなの!」
「順序?」
「あー、何でもない!」
 ユリアは大きな枕に抱き着くと、真っ赤な顔を隠して転がった。
 自分は何を言っているのだろう? 男に体を触らせるなど絶対の絶対にダメなはず。それを順序だなんて……。
 ユリアはしばらく動けなかった。









1-8. ドラゴンのディナー

 グゥ――――ギュルルル。
 ジェイドが心配そうにユリアを見守っていると、静かな部屋にユリアのおなかの音が響いた。
 クスッとジェイドは笑い、
「夕飯にしよう。肉しかないんだがいいか?」
 と、聞いた。
 ユリアは恥ずかしくなってさらに真っ赤になって固まる。
 ジェイドは首をかしげ、そっとユリアの手をさすった。

 ユリアは枕をそっとずらし、心配そうに見つめるジェイドを眺める……。
 そして大きく息をつくと、バッと起き上がり、言った。
「ごめんなさい、言い過ぎたわ。夕飯、お願いします。何か手伝うことがあったら……」
「大丈夫、ちょっと待ってて」
 ジェイドは優しく微笑んでそう言うと、部屋を出ていった。

 ユリアは立ち上がると、窓辺から月を眺め、