僕は深淵(しんえん)を覗(のぞ)き込んでいる。 そこには濃密な闇しかなく、静寂で、何かがうごめく気配や苦痛にうめく声なども一切ない。 生温かく仄(ほの)かに血の匂いがする空気を感じながら、僕は君を想いながら深淵の闇を見つめ続けている。 いつか深淵に堕ちることができたら。 その底にあるものは僕を楽にしてくれるだろうか。