こんなにアルコールに頼っているのに、彼を前にすると心臓がドキドキと音を立てて落ち着かなくなる。くそう、イケメンめ。非の打ち所がないイケメンが三次元にいるなんて信じられない。せめて歌くらいは下手であって欲しい。


そう云えば、どうして青葉君は私なんかに会いたいと思っていたのだろうか。



「百花さんって、恋人いないんですか?」

「いる訳ないじゃん。」

「意外ですね。可愛いからいると思ってました。」

「……口が上手だね。」

「本心ですよ。」


ソシャゲやアニメのキャラ以外に、私に「可愛い」と言ってくれる存在がいる事に驚愕する。しかもこんな、相手には一生困らなさそうな美形に言われるだなんて夢にも思わなかった。まさかこれは私の都合の良い夢なのではないだろうか。

四つも年下なのに、私よりも余裕を纏っていて大人な雰囲気に満ちている彼を見ながら、唇を尖らせて不貞腐れる。



揶揄(からか)わないでよ。」

「揶揄っていませんよ。百花さんはどんな人がタイプなんですか?」

「うーーん、この歳になると許容範囲が大きくなってくる。お家デートしてくれて、ゲームとかアニメ鑑賞に付き合ってくれる人…かな。」

「それじゃあ…。」


わざとらしく目を見開いた後、彼がひと際甘い笑みをぶら下げた。



「俺にも百花さんの恋人になれる可能性があるって事ですね。」


ぐしゃりと乱れていた私の毛束を掬った相手の余りの恰好良さに、不覚にも見惚れてしまう。これではまるで、私が青葉君の(てのひら)の上で踊らされているみたいだ。

ずっとキュンキュンさせられているのが何だか(しゃく)だった。それから普段は行かないバーの雰囲気に呑まれていたのも確かだった。更には、アルコールにどっぷり浸かっていたせいで思考回路にバグが生じていた。