青葉君は疑う余地すらない程に、ただただ良い人間だった。少なくとも、私の友人を金蔓にする様な人間ではなさそうだった。金を巻き上げるド悪党だと決めつけていた自分が恥ずかしくなる。
久し振りに三次元で美形を目の当たりにした事によるドキドキ感を誤魔化す為に普段以上にお酒を煽った。もう煽りに煽った。
「ちょっと、百花呑み過ぎじゃない?」
「呑み過ぎじゃないもん。」
「これは呑み過ぎだわ。あんた完全に呑まれてるじゃん。この一杯で最後にしなよ?」
「はーーーい。」
「私トイレ行って来るから、変な人に絡まれない様に気を付けてよ。」
「はーーーい、いってらっしゃーーい。」
手をヒラヒラと泳がせて見送る私に対して目を細めて「心配だわ」と言葉を残した友人が、小走りでその場からいなくなる。何杯目かも分からないモヒートをゴクリと流し入れて空になったグラスをカウンターに置いた。
「大分酔ってますね、百花さん。」
普通に座るのも難しくなってきて、少しカウンターに凭れながら友人の帰りを待っている私の空になったグラスを手に取った青葉君が、色素の薄い双眸に私を映しながら頬を緩めた。