社会人デビューを迎えて早くも三年。仕事や収入が安定してきた友人や同級生の第一次結婚ラッシュが幕を開けた。お祝儀を包む度に、激しい焦燥感に駆られていたのは確かだった。



結婚を考える恋人はおろか、好きな人も、気になる人すらもいない。焦る気持ちはいっちょ前に募らせておきながら出逢いを求めに外へ行くのが酷く億劫(おっくう)で、仕事が休みの日は家に引き篭もってゲームとアニメ三昧。

そんな生活を送る自分を客観視しては、恋人なんていなくて当然だと納得して頭を抱えていた。だから、心の何処かでどうにかしてこの状況を打破しなくてはと思っていたのだろう。



「あ!百花(ももか)!こっちこっち。」


明らかに場違いな気がするお洒落なバーの店内に戸惑っていると、カウンター席から私の名前を呼ぶ友人の姿を見つけて安堵する。



「百花に振られる覚悟で誘ったのによく来てくれたね。」

「うん、ちょっと気晴らししたかった。」

「こんな所に来るなんて珍しくない?」

「珍しいというか初めて。」

「マジ?」



隣の空席に腰を下ろして、目を見開いて吃驚している相手に対して深く頷く。味も大して分からないのに一番酒を呑んでいた大学時代ですら、こんな場所に来た事はない。

慣れないバーの雰囲気に、やっぱり来なければ良かったかななんて後悔を抱いた。