「アニメ、一緒に見ます。ゲームだって一緒にやります。百花さんとくっ付きながらダラダラするデートの権利、俺にくれませんか?」
「何言って…「私の事拾ってよって、百花さん言ってたじゃないですか。」」
「あれは悪い冗談で…「俺は本気です。」」
ゆるりと口角を吊り上げた彼が初めて見せる、意地悪な表情。妖艶でニヒルなその微笑みに、容赦なく胸が締め付けられる。
「高校三年の時に行った大学見学で高熱出てたんです。でも忙しい朝美が案内できる日がその日しかなくて無理して行ったんですけど、女子大生に絡まれてそれどころじゃなくて困ってたら、全然知らない人がさも俺の知り合いかの様に声を掛けてくれたんです。」
「……。」
「また連絡先でも訊かれるのかなって勘違いしていた俺にその人は、体調悪そうだったからお節介承知で拉致しちゃったごめんなさいって言ってスポーツドリンクとゼリーを手渡してくれたんです。」
「…え、ちょっと待って。」
「待たないです。」
「私、その話に心当たりがある。」
「知ってます。だって俺を助けてくれたその人こそ百花さんなんですもん。」
「…っっ…。」
「あの日以来、ずっと百花さんに恋してます。朝美に頼み込んでやっと紹介して貰えたのに、明日からまた他人同士なんて俺は嫌です。」
私の指を絡め取って、ちゅっと唇を寄せる彼に見惚れてしまう。仕草の一つ一つが魅惑的でこっちの心臓が持ちそうにない。
しかしながら私には問わねばならない事があった。青葉君が朝美と呼んでいる人物に関してだ。沖田 朝美。それは私をあのバーに呼び寄せた友人の名前だ。彼女を下の名前で親し気に呼び始めた彼に全く理解が追いついていない。

