一分。一秒。刻々と時は過ぎる。こんなにも時間の経過が惜しいと思った事はなかった。気を紛らわせる為に、思考回路を止める為に、この一週間で一番多くお酒を呑んだ。けれどやっぱり時間が経てば経つ程、寂寥は大きくなるばかりだった。
そろそろ帰らないと明日も仕事がある。せめて明日が休日だったら良かったのに。そうしたらもっと青葉君と一緒に居られたのに…って、あれ、私は年下相手に対して一体何を考えているのだろう。
「お会計お願いしま…「お会計、もう済ませましたよ。」」
すっかり酔った身体を立たせて財布を鞄から出そうとした私の手首を、不意に捕らえた熱い体温。その体温を手繰り寄せれば、私服に身を包んだ青葉君が待っていた。
「え、ちょっと待ってお金今払うから…「要らないです。」」
「でも…。」
慌てて福沢諭吉を召喚しようとする私の手を、熱い体温が制する。「その代わりお願いがあります」と子宮に響く声が耳を突く。
双眸を持ち上げて美しい彼を視界に映す。彼と私の視線が絡む。急激に自らの体温が上昇するのが厭なくらい分かった。
「その代わり、百花さんを家まで送らせて下さい。」
「……それが代わりになるとはとても思えないんだけど。」
「俺にとっては十分なります。」
“こんなに酔っている百花さんを独りで帰らせるなんて気が気じゃないので”
“なので、俺に送らせて下さい”