「お疲れ様でしたー」

 2週間後の土曜日。1年以上できていなかった念願のリリースイベント復活の日。アタシたちはいつにないテンションでイベントに臨んでいた。
 コロナのせいで長いことファンと直接触れ合うイベントができていなかってので、きりかもあやのも、普段以上に気合を入れていた。もちろんアタシも。
 流石に最近は、樋渡っちの泣き顔がアタシの仕事を邪魔することも無くなっていて、最高のパフォーマンスを皆の前で披露することができた。

「ああーーー!楽しかったーー!」

 これまでのフラストレーションを一気に発散させたようなあやのの声が、ロッカールームに響く。同感だ。やっぱりコールとペンライトの光の中で歌い踊るのは、最高に楽しい。そもそもアタシはこれをやりたくて、アイドルになったんだ。

「ファンのみんなもめっちゃ喜んでたし、ほんとよかった!」
「このまま、お渡し会や握手会も復活できるといいんだけどね」
「ほんとそれー!!」

 アタシの声もあやのの声にも、ステージの興奮が強く残っていた。まだ、ファンのみんなと直接触れ合うようなイベントは再開できそうにない。リリイベだって、世の中の情勢次第ではまた取りやめになるかもしれないという話だ。はやく、前みたいな活動ができればいいのに。つくづくそう思う。

 ガタンと、ドアが開く。ロッカールームにきりかが入ってきた。イベントが終了し、スタッフに挨拶して回ってる時に彼女とは別行動になってしまっていた。きりかとも今の興奮を分かち合いたい。そう思って、話しかけようとした時だった。

「ねえ、今聞いちゃったんだけど……」

 きりかの声も興奮でうわずっている。けど、それはアタシたちのものとは何か違うように感じられた。アレ? 即時に頭の中にはてなマークが発生する。

「2人ともさ。知ってた?」