――夜の公園。
 気がつくと一気にまくしたてていた。顔は涙でぐちゃぐちゃになり、声はかすれていた。
 自分の嫌らしいところ、醜いところ、洗いざらい岸野に聞かせてしまった。何でここまで話してしまつまたか分からない。これまで、彼への想いを誰にも話さなかった反動? それにしたってやり過ぎだ。岸野はどう思っただろう? いや、考えるまでもなくドン引きと幻滅だろう。せっかく、時間をとってくれたのに、酷いことしてしまった……。

「ごめんね、延々と変な話聞かせちゃっ……」
「つらかったんだな」

 アタシの言葉を遮るように、岸野はそう言った。メガネの奥の瞳はなんだか、優しげな光をたたえていた。

「つらい?」
「だってそうだろ、そんだけ強い思い抱えて、何年も誰にも話さなかったかったんだから」

 思いがけない言葉だった。でも違う。そうじゃない。アタシは自分のクズなところから目を逸らして、大人の彼に甘えきってただけだ。辛いとかそう言う話じゃない。

「いやいや、そんなんじゃなくてアタシは……」
「俺には殺したいくらい憎い奴がいる!」

 突然の宣言に、アタシは言葉がつまった。

「常にそいつが邪魔をしている。どうあがいても、何をしてもそいつには勝てない。勝たなきゃいけないのに全く勝ち目がない。だから憎いんだ……」

 岸野は本当に悔しそうに顔を歪ませていた。クールなクラス委員。たぶん私だけじゃなくてみんながそう思っているコイツにも、こんな顔をさせてしまうような相手がいるんだ……。

「そんなもんだろ。みんな何か醜いものを抱えてる。自分ひとりがクズだとかか思わないほうがいいぞ。むしろお前に必要なのは……」

 そう言って岸野はポケットからハンカチを取り出して、アタシに握らせた。

「何年も押さえ込んでいた自分を認めてやる事なんじゃないの?」
「あ……」

 その言葉を聞いた時、不意に体が軽くなった気がした。もう涙は止めようがないくらいに溢れ出ている。

「この公園、この時間通る人少ないし。今のうちに思いっきり泣いとけ。それでスッキリして、それから色々なことを考えるんだ」
「う……うん! うっ……うぐっ……」

 うわあああああああああぁぁぁぁ!!

 アタシの鳴き声が、夜の公園の木々を揺らした。いろんなものが胸の奥から湧き上がってきたが、全部涙で流してしまうことにした。
 岸野はの間ずっと、アタシの横にいてくれた……。