「それにしても、珍しいな。おまえが仕事に情をはさむなんて。しかも自分の命もかけて」
 しばらく、駆けだしていくターゲット二名の行動を目で追い、ロイと呼ばれた男は静かに自分の耳から指を外し、ぽつりと呟いた。
「だって、わたしたちは、あの子たちのようにキラキラした心を持っていないじゃない」
 麻子(あさこ)は悔しそうに瞳をとじる。
「それに、その探知機を持ってたあなただって、彼が迫ってきてたことを知ってたはずでしょ。それなのに…」
 その問いに、ロイはくくっと笑った。そして、空を見上げた。

「たしかに、こんな空を見てたらさ、もう戻りたくはなくなるんだろうからな」