本格的な活動再開の前に、教室を借りてポスター作りやら、ちゃんとした練習メニューの整理を始めた。

いっちーと二人だけの頃だったら、絶対にやらなかったようなことだ。

「ま、想像はしてたけどさ……」

「うん。酷いよね」

 さーちゃんとキジに呆れられる。

「だって……」

 浦島はテキパキと書類仕事をこなしてくれていた。

「とりあえず、細木んところ行って色々聞いてきたけど、年間活動予定とかこんな感じでいいのかな」

 昨日の放課後に皆で行ったフードコートで、具体的な内容は話し合っていた。

それに従って実際の作業を進めている。

「あ、いいんじゃない? 大会とかがないのが寂しいけど、他との交流試合とか考えていきたいよね。無理なら学内対抗戦とか」

「合宿とかの予算を考えると、遠征なんかよりももっと……」

 いつの間にか、さーちゃんと浦島はすっかり仲良しだ。

「キジって、本当にバレエ部の部長さんだったの?」

 金太郎はあたしを見て、にっこりと笑った。

「わぁ、一度でいいから、見てみたかったなぁ」

 そんなことを言いながら、パソコンで勧誘広告を作ってる。

デジタルで絵も描けるなんて、信じらんない。

「動画とか持ってない?」

「持ってても本人の許可がないと見せないよ」

 そう言ったら金太郎はクスクスと笑った。

「やだな、ももちゃんもキジと同じこと言うんだ。お願いしたのに、絶対見せないって断られるんだよ」

 教室のドアが勢いよく開いた。

「ただいまー!」

 桃が戻ってきた。

その後ろにはいっちーとキジもいる。

「倉庫のこん棒、数えてきたよ。ベルトもまだ残ってるけど、数は少ないね。腕章は作られた世代が違うのかな? デザインの違うのがいくつかあって……」

 いっちーは、さーちゃんと浦島に倉庫調査の結果を報告をしている。

金太郎はキジを見て、にこっと微笑んだ。

彼女はそれに、ふいと顔を背ける。

桃があたしの隣に腰を下ろした。

「どう? 作業進んでる?」

 進んでるも何も、あたしはただここに座って、浦島とさーちゃん、金太郎からのあれやこれやの質問に、「あー、どうしよう。分かんない」「じゃあ後でみんなで考えるか」「うん、そうだね」とか言ってるだけだし。

 桃の目があまりまっすぐにあたしを見てくるから、あたしもそれに視線を合わせる。

桃は「どうかした?」とでもいうように、首をかしげた。

桃の黒くまっすぐな髪と、あたしのくるくる天パのショートヘアが、同じ色をしているのをとても不思議に思う。

この空間に、あたしは部長だからという理由だけで、ここに座っている。

また教室の扉が開いた。

「よっ、やってるか?」

「細木先生!」

 桃はパッと立ち上がる。

「新入生の入部希望はあった?」

「まだ気が早いっすよ」

 そう言って笑う。

細木の手が桃の肩にのった。

浦島はまだ完成していない書類を細木に見せる。

「こんな感じで大丈夫ですかね」

「あぁ、いいんじゃない。こっちはもう出来てるの?」

 細木はポケットから印鑑を取り出すと、ろくに見もしないでそこに印を押した。

細木はそのまま続ける。

「あ、部活用の学校アカウント、許可下りたから。これがIDとパスワードね」

 金太郎に、一枚の紙ペラを渡した。

「あぁ。ありがとうございます!」

「勧誘案内の印刷は? 何部刷る予定?」

「今のところ、実動部員は7人ですからね、あまり部数刷っても……」

 金太郎の作業していたPCを、細木はのぞき込んだ。

「うおっ、お前絵も描けるのか。凄いな」

「こんな感じでどうですかね?」

「うん、いいんじゃない」

 画面を見ながら語り出した細木に、浦島が声をかけた。