「おぉっ!」

 チラ見えするブラは、総レースの如何にも高そうなもの。

寄せて上げてしっかり胸の谷間を形成している。

「そのブラどこで買ったの? なんていうやつ?」

 クラス中の視線が集まる。

「あんたたちには絶対に教えないから、安心して」

「なんだよそれー!」

「教室の窓全開にして、冷気を入れられたくなかったら、さっさと着替えなさい」

 この時点でも、まだ誰一人としてまともに着替えていない。

「はーい。ここテストに出すよー」

 堀川はそんな教師ならではの権力を行使しながら、無理矢理授業を始めた。

教科書のページを読み上げ始めた堀川に、その数字を聞き逃さないようあたしたちは声を潜め、必死にメモを取る。

「つーかソレ、結局テスト範囲全部じゃね?」

「全員席についた? じゃあ授業を始めます」

 そんな日常を繰り返しながら、やがて冬になった。

冬にはサツマイモ星からやって来た、芋しか食べられないサツマイモ星人のように、焼き芋ばかりを食べて過ごす。

今日は特に寒くって、空に小雪が舞っていた。

「今日の芋もうまいな」

「焼き芋に外れはないよ」

 演武場前の階段に並んで腰を下ろしたその目の前には、取り崩されたレンガの残骸が山となって積まれている。

それはこの学校のシンボルでもあった、あたしたちを取り囲むぐるり高い城壁で、もうあたしたちを守るその壁は存在しない。

取り壊されたチョコレート色のレンガの後には、細い針金のフェンスが取り付けられていた。

そのあみあみの向こうには、今まで見えなかった外の世界が見える。

冬のお日さまは信じられないくらいのスピードで沈んでいって、まだ明るくてもいいはずに時間にもう辺りは薄暗い。

「体動かした後の芋は、最高だね」

「間違いないね」

 焼き芋の熱と吐く息とが混ざり合い白く濁る。

新学期が間近に迫っていた。

「……。やっぱ芋うまいな」

「最高だよ」

 春が来た。