「一花! やっと見つけたぁ~」

 桃だ。金太郎と浦島もいる。

制服じゃないから少し幼く見える彼らの腰には、やっぱり鬼退治用の日本刀がぶら下がっていた。

「来なくていいって言ったのに……」

 いっちーはぼそりとそうつぶやいたけど、きっと桃たちには聞こえていない。

桃は水槽をはさんであたしたちの前にしゃがみ込んだ。

「俺もヨーヨー釣りする」

 いっちーはムッとしたままで、釣り紐を桃に渡した。

金太郎と浦島は教室内の他の屋台をのぞいている。

「どれが取りやすいとかある?」

「ない」

 いっちーは相変わらずぶっきらぼうだけど、桃はうきうきしていた。

「ね、このあと時間ある? 金太郎と浦島も来てるからさ、ももちゃんも一緒に回ろうよ」

 桃はあたしを見つめると、ニッと笑った。

その無邪気過ぎる笑顔に、もうなんて言っていいのか分かんない。

「いっちー、行っといでよ」

「あたしはいい。ももとじゃないと嫌だ」

 あたしはため息をつく。

いっちーが本音のところでどう思ってるのかとか、あえて聞かないけど……。

「ももといっちーお疲れー。交代時間だからもう行って大丈夫だよー」

 そう声をかけてくれたのは、気を利かしてくれたのか、そうじゃないのか。

でも交代の時間は本当だから仕方がない。

勝手に待ち構えている桃たちと一緒に、あたしといっちーは歩き出した。

こん棒と日本刀という劣等感、というよりも、あたしたちのサークルがこの桃たちによって支えられているメンバーだと、見に来ている人たちにそう思われたくなかった。

 あたしといっちーは、桃たちを順番に案内して回る。

焼きそばを食べたり、ダーツしたり。

桃たちが楽しむ様子を、腕組みしながら後ろで見ていた。

「ね、次はどこ行く?」

「あぁ、そうだね……」

 金太郎にそう言われて、あたしは困ってしまった。

次と言っても思いつく場所がもうない。

いっちーはどうやら、考えることも放棄してしまってるようだ。

浦島はそんなあたしたちを見てフッと笑った。

「いつもどこで昼飯とか食ってんの? 二人が普段、どこでどんなことをしてるのか知りたいな」

「そう! それ。そういうの」

 桃は急に振り返って、笑顔を振りまく。

「教室の席とか、いつも通る廊下とか、階段の手すりとか、校庭の思い出の場所に行きたい。いつも、一花とももちゃんが見ている風景が見たい」

 あたしはいっちーをチラリと観察する。

いっちーはムッとしたまま動かない。

仕方なくため息をついた。

「今は学祭だから、普段とは全然違うけど……」

 あたしは桃に話してあげる。

いつもお弁当を食べてる場所、サッカーしてた校庭、保健室、いっちーとあたしがいつも……。

「いつも、練習はどこでやってんの?」

「練習? あぁ、鬼退治サークルの? それは……」

 さーちゃんとむーちゃんが歩いている。

さーちゃんはかわいい白雪姫で、むーちゃんは赤ずきんの狼だ。

その二人が見知らぬ男二人に絡まれていた。