「……なんだよ、なにがあった?」
さーちゃんとキジだ。
あたしはぐずぐずと鼻水をすすりながら訴えた。
「失敗したぁ! 絶対いっちーに嫌われたぁ!」
「あらまぁ」
キジはポケットティッシュを出してあたしに渡してくれる。
それで思い切り鼻をかんだ。
「で、いっちーとどうしたって?」
「あたし、絶対に言っちゃダメなこと言った。今まで散々言われてきて、あたしが一番嫌だったのと同じことを、いっちーに言っちゃった!」
「なにそれ」
さーちゃんのスマホが鳴る。
そこには男女5人で歩くさっきまでの隠し撮りの画像が送られていた。
「原因はコレ? まさか男関係でケンカしたの?」
激しく首を横に振る。
いつまでたっても涙があふれてくる。
「違うの。いっちーにはちゃんと守ってくれる人たちがいるんだから、別に鬼退治とかしなくていいんじゃないのかって。あたしなんかといるより、この人たちと一緒の方がいいんじゃないかって」
「それは傷つけちゃったね」
キジはため息をつく。
「きっと道場のなかで、いつも彼女が言われていたことよ。だからいっちーは、ずっと我慢してこん棒を握らずにいたのに」
「ももから『いらない』って言われたのと同じじゃない」
いっちーは強いけど女の子だからって、いつも一番後ろにやられることが、座って見ているだけにされることが、なによりも苦しかったのに……。
「あたしもそういうの、一番嫌い」
自分より他に、もっと強くて上手い人がいたって、やりたいものはやりたいし、ヘタでもヘタなりに頑張りたい。
どんなに笑われたってバカにされたって、あきらめきれないものはあきらめられない。
「だからね、鬼退治サークル作ったの」
「うん。出来たじゃない」
「おめでとう。活動はこれからでしょ」
鼻水が止まらない。
「ちゃんと謝ったら、許してくれるかな」
いっちーを探しに行こう。
もう帰っちゃったかな。
また一緒にアイス食べにいきたい。
「電話してみたら?」
さーちゃんに言われて、スマホを取り出す。
かけた電話はすぐにつながった。
「いっちー……あたしね……」
「もも」
いっちーの声がする。
「いまどこにいるの?」
「蔵前公園」
すぐ近くの公園だ。
「今から行ってもいい?」
「うん」
それだけで通信はプツリと切れた。
「やっぱり怒ってるのかな」
あたしはまた泣きそうな声になる。
「ねぇ、一緒についてきてくんない?」
あたしのお願いに、さーちゃんとキジは顔を見合わせた。
「もう、仕方ないな」
キジの方がさーちゃんより先に立ち上がった。
「もも。鼻をかんだ後のティッシュはちゃんと持ち帰って」
あたしはいっちーのこん棒とベルトを手にとる。
「これ、持っていってもいいかな」
「いいんじゃない」
さーちゃんはため息をついた。
「全く。それでなんであんたが泣いてんのよ」
さーちゃんは体育科倉庫に押し込められていたこん棒を手にした。
「で、どうやってつけんの? これ」
段ボールの山にあったベルトを装着し、腕に腕章も通す。
「さーちゃん、いいの?」
「実はコレ、ちょっといいなーって思ってたんだよね」
彼女の制服に、校章入りのベルトとこん棒がぶら下がった。
坊主頭の彼女は腰に手を当て、くるりと回ってから意気込んで見せる。
「カッコよくない?」
「うん。いいと思う」
キジはさーちゃんの制服のしわを伸ばし、さらにそれを整えた。
あたしは泣きながらもう一度鼻をかむ。
「いっちーを迎えに行こう」
さーちゃんとキジだ。
あたしはぐずぐずと鼻水をすすりながら訴えた。
「失敗したぁ! 絶対いっちーに嫌われたぁ!」
「あらまぁ」
キジはポケットティッシュを出してあたしに渡してくれる。
それで思い切り鼻をかんだ。
「で、いっちーとどうしたって?」
「あたし、絶対に言っちゃダメなこと言った。今まで散々言われてきて、あたしが一番嫌だったのと同じことを、いっちーに言っちゃった!」
「なにそれ」
さーちゃんのスマホが鳴る。
そこには男女5人で歩くさっきまでの隠し撮りの画像が送られていた。
「原因はコレ? まさか男関係でケンカしたの?」
激しく首を横に振る。
いつまでたっても涙があふれてくる。
「違うの。いっちーにはちゃんと守ってくれる人たちがいるんだから、別に鬼退治とかしなくていいんじゃないのかって。あたしなんかといるより、この人たちと一緒の方がいいんじゃないかって」
「それは傷つけちゃったね」
キジはため息をつく。
「きっと道場のなかで、いつも彼女が言われていたことよ。だからいっちーは、ずっと我慢してこん棒を握らずにいたのに」
「ももから『いらない』って言われたのと同じじゃない」
いっちーは強いけど女の子だからって、いつも一番後ろにやられることが、座って見ているだけにされることが、なによりも苦しかったのに……。
「あたしもそういうの、一番嫌い」
自分より他に、もっと強くて上手い人がいたって、やりたいものはやりたいし、ヘタでもヘタなりに頑張りたい。
どんなに笑われたってバカにされたって、あきらめきれないものはあきらめられない。
「だからね、鬼退治サークル作ったの」
「うん。出来たじゃない」
「おめでとう。活動はこれからでしょ」
鼻水が止まらない。
「ちゃんと謝ったら、許してくれるかな」
いっちーを探しに行こう。
もう帰っちゃったかな。
また一緒にアイス食べにいきたい。
「電話してみたら?」
さーちゃんに言われて、スマホを取り出す。
かけた電話はすぐにつながった。
「いっちー……あたしね……」
「もも」
いっちーの声がする。
「いまどこにいるの?」
「蔵前公園」
すぐ近くの公園だ。
「今から行ってもいい?」
「うん」
それだけで通信はプツリと切れた。
「やっぱり怒ってるのかな」
あたしはまた泣きそうな声になる。
「ねぇ、一緒についてきてくんない?」
あたしのお願いに、さーちゃんとキジは顔を見合わせた。
「もう、仕方ないな」
キジの方がさーちゃんより先に立ち上がった。
「もも。鼻をかんだ後のティッシュはちゃんと持ち帰って」
あたしはいっちーのこん棒とベルトを手にとる。
「これ、持っていってもいいかな」
「いいんじゃない」
さーちゃんはため息をついた。
「全く。それでなんであんたが泣いてんのよ」
さーちゃんは体育科倉庫に押し込められていたこん棒を手にした。
「で、どうやってつけんの? これ」
段ボールの山にあったベルトを装着し、腕に腕章も通す。
「さーちゃん、いいの?」
「実はコレ、ちょっといいなーって思ってたんだよね」
彼女の制服に、校章入りのベルトとこん棒がぶら下がった。
坊主頭の彼女は腰に手を当て、くるりと回ってから意気込んで見せる。
「カッコよくない?」
「うん。いいと思う」
キジはさーちゃんの制服のしわを伸ばし、さらにそれを整えた。
あたしは泣きながらもう一度鼻をかむ。
「いっちーを迎えに行こう」