翌日、生徒会のはーとしーに尋ねてみれば、そのバレエ部新部長は三組の雉沼さんだった。
三組にはさーちゃんもいる。
「キジ、呼び出したりしてゴメンね」
一年の時にいっちーとキジは同じクラスだったらしい。
いっちーの呼び出しに応じたキジは、昼休みの中庭にやって来た。
「あら。珍しいこともあるもんだと思ってたら、なんの用?」
キジと呼ばれた彼女は長い黒髪を泳がせ、仕草までとっても優雅で気品がある。
スラリと背の高いいっちーと彼女が並ぶと、長髪の騎士とどっかのお姫さまみたいだ。
「あのさ、バレエ部のことなんだけど……」
一通り事情を説明した後で、キジはため息をついた。
「で、私たちのこととあなたたちになんの関係があるの?」
キジは切れ長の目を冷たく光らせる。
「鬼退治サークルを作るのはどうぞご自由に。だけどそれとこれとは話しが別よ」
彼女は立ち上がる。
「この話しはさーちゃんにも?」
あたしはゴクリと唾を飲み込む。
この二人の関係をコントロールしたいなら、どうすればいい?
だけどこんなところで、つまらないウソをついても仕方がない。
「さーちゃんから聞いた。彼女も何とかしたいと思ってる」
「そう」
キジの艶やかな黒髪が揺れる。
「申し訳ないけど、あなたたちの助けはいらない」
昼休み終了5分前のチャイムが鳴る。
去りゆく彼女の背中に、昨日見たさーちゃんの寂しそうな背中が重なる。
あたしは覚悟を決める。
やっぱりなんとかしなくちゃ。
それは鬼退治のためってだけじゃない。
放課後になった。
「頼もう!」
勢いよく演武場の扉を開けた。
さーちゃんとキジはそれぞれの仲間を引き連れ、やっぱり向かい合っている。
「来たね、もも!」
さーちゃんは手刀を構えた。
「ここにあんたたちの居場所はないって言ったよね!」
その手にはチアのポンポンが握られている。
キジは派手なバレエ用の扇子を手にしていた。
「口出しは無用って、確かに伝えたはずだけど?」
「くっだらない喧嘩してるくらいなら、うちらに場所譲れ!」
「悪いけど、それは無理!」
あたしは腰のこん棒に手を置いた。
さーちゃんの高いジャンプからの跳び蹴り。
チア部部長の彼女は、身軽さが最大の武器だ。
着地と同時に床を擦るような素早いリーチからの回し蹴り。
飛び退いたあたしの落下予測地点に、渾身の拳を突く。
その拳を避けたはずのあたしの頬を、ポンポンのヒダがかすめた。
レインボーラメのそれは薄い刃のように肌を裂く。
空中で自在に弧を描くポンポンは、さーちゃんの手に戻った。
「キジ、ここは一時休戦ってことで」
「そうね。まずはももたちをなんとかしないと」
元々は仲良く同じチームを組んでいた相手同士だ。
手強いのは分かってる。
「どっからでもかかって来い!」
さーちゃんは両手に大きくポンポンを掲げ大の字ポーズを決める。
その前でキジはバレエダンサーらしく扇子を片手にしなやかなポーズと取った。
「邪魔はさせない!」
腰のこん棒を抜いた。
「望むところよ!」
あたしが踏み込むと同時に、2つの影は動いた。
ポンポンは手裏剣のように交錯する。
その1つをたたき落とした。
その隙をついた死角からキジの足蹴りが伸びる。
あたしは床にこん棒突き、それを支点に真上に伸び上がった。
ポンポンは空を斬る。
手の甲に赤い血筋が走った。
三組にはさーちゃんもいる。
「キジ、呼び出したりしてゴメンね」
一年の時にいっちーとキジは同じクラスだったらしい。
いっちーの呼び出しに応じたキジは、昼休みの中庭にやって来た。
「あら。珍しいこともあるもんだと思ってたら、なんの用?」
キジと呼ばれた彼女は長い黒髪を泳がせ、仕草までとっても優雅で気品がある。
スラリと背の高いいっちーと彼女が並ぶと、長髪の騎士とどっかのお姫さまみたいだ。
「あのさ、バレエ部のことなんだけど……」
一通り事情を説明した後で、キジはため息をついた。
「で、私たちのこととあなたたちになんの関係があるの?」
キジは切れ長の目を冷たく光らせる。
「鬼退治サークルを作るのはどうぞご自由に。だけどそれとこれとは話しが別よ」
彼女は立ち上がる。
「この話しはさーちゃんにも?」
あたしはゴクリと唾を飲み込む。
この二人の関係をコントロールしたいなら、どうすればいい?
だけどこんなところで、つまらないウソをついても仕方がない。
「さーちゃんから聞いた。彼女も何とかしたいと思ってる」
「そう」
キジの艶やかな黒髪が揺れる。
「申し訳ないけど、あなたたちの助けはいらない」
昼休み終了5分前のチャイムが鳴る。
去りゆく彼女の背中に、昨日見たさーちゃんの寂しそうな背中が重なる。
あたしは覚悟を決める。
やっぱりなんとかしなくちゃ。
それは鬼退治のためってだけじゃない。
放課後になった。
「頼もう!」
勢いよく演武場の扉を開けた。
さーちゃんとキジはそれぞれの仲間を引き連れ、やっぱり向かい合っている。
「来たね、もも!」
さーちゃんは手刀を構えた。
「ここにあんたたちの居場所はないって言ったよね!」
その手にはチアのポンポンが握られている。
キジは派手なバレエ用の扇子を手にしていた。
「口出しは無用って、確かに伝えたはずだけど?」
「くっだらない喧嘩してるくらいなら、うちらに場所譲れ!」
「悪いけど、それは無理!」
あたしは腰のこん棒に手を置いた。
さーちゃんの高いジャンプからの跳び蹴り。
チア部部長の彼女は、身軽さが最大の武器だ。
着地と同時に床を擦るような素早いリーチからの回し蹴り。
飛び退いたあたしの落下予測地点に、渾身の拳を突く。
その拳を避けたはずのあたしの頬を、ポンポンのヒダがかすめた。
レインボーラメのそれは薄い刃のように肌を裂く。
空中で自在に弧を描くポンポンは、さーちゃんの手に戻った。
「キジ、ここは一時休戦ってことで」
「そうね。まずはももたちをなんとかしないと」
元々は仲良く同じチームを組んでいた相手同士だ。
手強いのは分かってる。
「どっからでもかかって来い!」
さーちゃんは両手に大きくポンポンを掲げ大の字ポーズを決める。
その前でキジはバレエダンサーらしく扇子を片手にしなやかなポーズと取った。
「邪魔はさせない!」
腰のこん棒を抜いた。
「望むところよ!」
あたしが踏み込むと同時に、2つの影は動いた。
ポンポンは手裏剣のように交錯する。
その1つをたたき落とした。
その隙をついた死角からキジの足蹴りが伸びる。
あたしは床にこん棒突き、それを支点に真上に伸び上がった。
ポンポンは空を斬る。
手の甲に赤い血筋が走った。