「あんたってのは、本当にいつもいつも……」
「アホか」
さーちゃんは、いっちーの胸ぐらをグッとつかんで引き寄せた。
「私がこんな頭にしてんのはね、バカにされないためよ。ふわっふわのくるくる長い髪だとね、どんなにカッコつけてたって相手にされない。バカにされるだけ。分かるでしょ? 私みたいなチビの巨乳はね、絶対まともに扱ってもらえないの。話しすら聞こうとしない」
さーちゃんはドカリと椅子に腰を下ろした。
「いつもニコニコ笑って周囲のイメージ通り、頭の悪いフリしてんのはもう飽きたから。だからね、思い切って頭を坊主にしてみたのよ」
彼女は笑っていた。
「そしたらね、本当の私を知っている人以外、誰も寄りつかなくなった。便利じゃない? 私はようやく自由になれたのよ。ラクすぎちゃってさー」
少し冷めたたこ焼きを、彼女はまた一口で放り込む。
今度は美味しそうにもぐもぐと食べた。
「だからね、こん棒なんていらないの」
いっちーのまっすぐな長い髪と、あたしのくるくる天パショート。
さーちゃんが髪を伸ばしたら、どんなふうになるんだろう。
「たこ焼き、食べないの?」
さーちゃんにそう言われて、いっちーは串を手に取った。
「食べる」
まだ温かいそれを、口に放り込む。
さーちゃんは学校ではいつも元気で明るくて、友達もいっぱいいて、楽しそうに過ごしている。
いっちーは浅く長いため息をついた。
「あんたが鬼退治に興味ないってのならいいけど」
いっちーはさーちゃんを見つめる。
「私は別に、嫌いじゃないよ」
「あはははは! やっぱ真面目だね」
さーちゃんは腹を抱えて笑う。
目尻にあふれる涙を拭った。
「私はあんたのそういうトコ、面倒くさいって思ってるよ」
いっちーは静かに闘志を燃やしていて、さーちゃんはニヤニヤ笑ってるから、あたしはもう何だかどうしようもない。
「早く食べないと、あたしが全部食べちゃうよー」
いっちーのたこ焼きにぷすりと串をさす。
それを目の前でひらひらさせたら、いっちーの口が開いた。
そこへ放り込む。
最初はちゃんといっちーね。
意外と何でも自分が一番じゃないと気に入らない、真面目でお堅い性格。
次はさーちゃん。
お友達になった記念にやっぱりあーんしてパクリ。
チャラチャラしてるように見えるけど、中身はすっごいしっかりしてる。
あたしは串に刺したたこ焼きを、そんな二人に一つずつ食べさせてあげる。
「みんなで食べるとおいしいね!」
二人はムッとした顔のまま、もぐもぐしていたけど、たこ焼きはおいしいから大丈夫。
「ね、やっぱりベルト、いっちーの道場で使ってるやつを買えないかな。親には相談できない?」
いっちーはたこ焼きをゴクリと飲み込んだ。
「分かんない。親は私に何も言わないから。こん棒とベルトくらいはあると思うけど……」
いっちーはうつむいてしまった。
空っぽになったたこ焼きの舟の上には、青のりとかつお節の残骸が散らばる。
「私はいつも手伝いっていうか、雑用ばっかりで……。そういうのは何ていうか……」
「鬼退治が悪いとかは、全然思ってないけど」
さーちゃんは立ち上がった。
「あんたたちにそれなりの覚悟があるってとこを見せないと、誰も助けてはくれないと思うよ」
彼女はリュックを肩に担ぐと、空っぽになった三人分の舟を持ち上げる。
「みんなそれなりに自分たちのやり方で、鬼とは戦ってるんだから」
彼女のその言葉に、あたしが笑みを浮かべたら、いっちーはムッとした顔をする。
さーちゃんはフンと鼻息一つだけを返して行ってしまった。
すっかり静かになってしまったままのいっちーと駅前で別れる。
また明日も学校で会えるってのは、とっても幸せなことだと思った。
「アホか」
さーちゃんは、いっちーの胸ぐらをグッとつかんで引き寄せた。
「私がこんな頭にしてんのはね、バカにされないためよ。ふわっふわのくるくる長い髪だとね、どんなにカッコつけてたって相手にされない。バカにされるだけ。分かるでしょ? 私みたいなチビの巨乳はね、絶対まともに扱ってもらえないの。話しすら聞こうとしない」
さーちゃんはドカリと椅子に腰を下ろした。
「いつもニコニコ笑って周囲のイメージ通り、頭の悪いフリしてんのはもう飽きたから。だからね、思い切って頭を坊主にしてみたのよ」
彼女は笑っていた。
「そしたらね、本当の私を知っている人以外、誰も寄りつかなくなった。便利じゃない? 私はようやく自由になれたのよ。ラクすぎちゃってさー」
少し冷めたたこ焼きを、彼女はまた一口で放り込む。
今度は美味しそうにもぐもぐと食べた。
「だからね、こん棒なんていらないの」
いっちーのまっすぐな長い髪と、あたしのくるくる天パショート。
さーちゃんが髪を伸ばしたら、どんなふうになるんだろう。
「たこ焼き、食べないの?」
さーちゃんにそう言われて、いっちーは串を手に取った。
「食べる」
まだ温かいそれを、口に放り込む。
さーちゃんは学校ではいつも元気で明るくて、友達もいっぱいいて、楽しそうに過ごしている。
いっちーは浅く長いため息をついた。
「あんたが鬼退治に興味ないってのならいいけど」
いっちーはさーちゃんを見つめる。
「私は別に、嫌いじゃないよ」
「あはははは! やっぱ真面目だね」
さーちゃんは腹を抱えて笑う。
目尻にあふれる涙を拭った。
「私はあんたのそういうトコ、面倒くさいって思ってるよ」
いっちーは静かに闘志を燃やしていて、さーちゃんはニヤニヤ笑ってるから、あたしはもう何だかどうしようもない。
「早く食べないと、あたしが全部食べちゃうよー」
いっちーのたこ焼きにぷすりと串をさす。
それを目の前でひらひらさせたら、いっちーの口が開いた。
そこへ放り込む。
最初はちゃんといっちーね。
意外と何でも自分が一番じゃないと気に入らない、真面目でお堅い性格。
次はさーちゃん。
お友達になった記念にやっぱりあーんしてパクリ。
チャラチャラしてるように見えるけど、中身はすっごいしっかりしてる。
あたしは串に刺したたこ焼きを、そんな二人に一つずつ食べさせてあげる。
「みんなで食べるとおいしいね!」
二人はムッとした顔のまま、もぐもぐしていたけど、たこ焼きはおいしいから大丈夫。
「ね、やっぱりベルト、いっちーの道場で使ってるやつを買えないかな。親には相談できない?」
いっちーはたこ焼きをゴクリと飲み込んだ。
「分かんない。親は私に何も言わないから。こん棒とベルトくらいはあると思うけど……」
いっちーはうつむいてしまった。
空っぽになったたこ焼きの舟の上には、青のりとかつお節の残骸が散らばる。
「私はいつも手伝いっていうか、雑用ばっかりで……。そういうのは何ていうか……」
「鬼退治が悪いとかは、全然思ってないけど」
さーちゃんは立ち上がった。
「あんたたちにそれなりの覚悟があるってとこを見せないと、誰も助けてはくれないと思うよ」
彼女はリュックを肩に担ぐと、空っぽになった三人分の舟を持ち上げる。
「みんなそれなりに自分たちのやり方で、鬼とは戦ってるんだから」
彼女のその言葉に、あたしが笑みを浮かべたら、いっちーはムッとした顔をする。
さーちゃんはフンと鼻息一つだけを返して行ってしまった。
すっかり静かになってしまったままのいっちーと駅前で別れる。
また明日も学校で会えるってのは、とっても幸せなことだと思った。