「何なのアイツ! あの金ザル! あっちの方が頭おかしいんじゃない?」
雑貨屋さんの一角にもうけられた鬼退治関連グッズコーナーには、わずかな商品しか置いてなくて、置いてあるのも鬼避けのお守りとか防犯ブザーみたいなのばっかりだ。
「あ、この根付け同じのにしようよ」
「かわいい」
こん棒や柄につけるアクセサリーばかりで、探していたベルトはすぐにちぎれてしまいそうなファッション性の高いものしかない。
あたしはふと帯刀したいっちーの男友達の姿を思い浮かべた。
重い真剣を一日中ぶら下げて、実戦に耐える実用性重視のしっかりした作り。
あの刀は誰から譲り受けたんだろう。
「ねぇ……」
「ん? なに」
「……あ、やっぱなんでもない」
それを聞いてはいけないような気がした。
それを彼女に聞けるようになるのは、少なくともあたしたちが帯刀者並みに認められてからだ。
こん棒すら握らせてもらったことがないといういっちーに、そんなことはまだ聞けない。
ビニール製のすぐにすり切れてしまいそうな帯刀用ベルトは、重いこん棒をぶら下げるには余りにも頼りない。
それを手に取ったいっちーの横顔も沈んでいる。
そうだよね。
あたしたちの望んでいるものは、こういうものじゃないんだ。
「あんまりいいのないね」
「……帰ろっか」
「うん」
一番に望んでいるものは、実は自分たちの間近にあって、本当はそれを分かっているけど何にも言えないのは、やっぱり自分たちにはふさわしくないんじゃないかとか、頑張っても無理なんじゃないかとか、そんなふうに迷っているから。
本当にやり遂げられるんだろうかとか、それで出来なかったらどうしようとか、そしたらでかい口叩いたくせに周りに迷惑かけちゃうなとか、そんなことばかりを気にしている。
駅まで戻ると、いつものように駅バァがいた。
「またそんなもん持ちまわりよって! ろくになぁーんにも出来ん奴ほど、下らんことにばっかり手を出しよる!」
くしゃくしゃのつまらない婆さんのクセに、声だけは誰よりもでかい。
「いつまでもフラフラふらふら遊び歩かんと、やることせんか!」
知っている人にとってはいつもの風景だし、ランダムテロだって分かってるけど、初めて聞くような人たちはすんごいびっくりしたような顔をして、あたしたちを見てくる。
その群衆の中にさーちゃんの姿があった。
「何よ。結局ベルト買ってないんじゃん」
彼女を見た駅バァは、急に大声で笑い始めた。
「出たな黄ザル! お前はまたヘマをやらかして坊主にされたんか! いつまでたっても成長せんのぉ!」
下品な笑い声が小さな広場に響き渡る。
彼女は駅バァをチラリと見ただけで、全く気にしていない。
「買わなかったの?」
「いいのがなくて」
「かわいいの?」
さーちゃんのその挑発的な物言いに、いっちーの眉がピクリと動く。
「残念だったね!」
彼女は満面の笑みを浮かべた。
「黄ザルは今度は何をやらかしたんじゃ! 相変わらず成長せんヤツじゃのう! 頭悪いんか!」
さーちゃんはあたしたちに向かって大きく手を振るふと、ホームに姿を消す。
「何なのアイツ!」
「あたしもちゃんと探してみるね、ベルト。明日からはちゃんと練習もしよう」
そう言ったら、いっちーは大人しくうなずいた。
「私もちょっと勉強してくる」
「うん」
「バカはバカ同士でつるんどんか! 腐っとる!」
その場で別れる。
あたしはこれからのことを色々と考えなから、前へと踏み出した。
雑貨屋さんの一角にもうけられた鬼退治関連グッズコーナーには、わずかな商品しか置いてなくて、置いてあるのも鬼避けのお守りとか防犯ブザーみたいなのばっかりだ。
「あ、この根付け同じのにしようよ」
「かわいい」
こん棒や柄につけるアクセサリーばかりで、探していたベルトはすぐにちぎれてしまいそうなファッション性の高いものしかない。
あたしはふと帯刀したいっちーの男友達の姿を思い浮かべた。
重い真剣を一日中ぶら下げて、実戦に耐える実用性重視のしっかりした作り。
あの刀は誰から譲り受けたんだろう。
「ねぇ……」
「ん? なに」
「……あ、やっぱなんでもない」
それを聞いてはいけないような気がした。
それを彼女に聞けるようになるのは、少なくともあたしたちが帯刀者並みに認められてからだ。
こん棒すら握らせてもらったことがないといういっちーに、そんなことはまだ聞けない。
ビニール製のすぐにすり切れてしまいそうな帯刀用ベルトは、重いこん棒をぶら下げるには余りにも頼りない。
それを手に取ったいっちーの横顔も沈んでいる。
そうだよね。
あたしたちの望んでいるものは、こういうものじゃないんだ。
「あんまりいいのないね」
「……帰ろっか」
「うん」
一番に望んでいるものは、実は自分たちの間近にあって、本当はそれを分かっているけど何にも言えないのは、やっぱり自分たちにはふさわしくないんじゃないかとか、頑張っても無理なんじゃないかとか、そんなふうに迷っているから。
本当にやり遂げられるんだろうかとか、それで出来なかったらどうしようとか、そしたらでかい口叩いたくせに周りに迷惑かけちゃうなとか、そんなことばかりを気にしている。
駅まで戻ると、いつものように駅バァがいた。
「またそんなもん持ちまわりよって! ろくになぁーんにも出来ん奴ほど、下らんことにばっかり手を出しよる!」
くしゃくしゃのつまらない婆さんのクセに、声だけは誰よりもでかい。
「いつまでもフラフラふらふら遊び歩かんと、やることせんか!」
知っている人にとってはいつもの風景だし、ランダムテロだって分かってるけど、初めて聞くような人たちはすんごいびっくりしたような顔をして、あたしたちを見てくる。
その群衆の中にさーちゃんの姿があった。
「何よ。結局ベルト買ってないんじゃん」
彼女を見た駅バァは、急に大声で笑い始めた。
「出たな黄ザル! お前はまたヘマをやらかして坊主にされたんか! いつまでたっても成長せんのぉ!」
下品な笑い声が小さな広場に響き渡る。
彼女は駅バァをチラリと見ただけで、全く気にしていない。
「買わなかったの?」
「いいのがなくて」
「かわいいの?」
さーちゃんのその挑発的な物言いに、いっちーの眉がピクリと動く。
「残念だったね!」
彼女は満面の笑みを浮かべた。
「黄ザルは今度は何をやらかしたんじゃ! 相変わらず成長せんヤツじゃのう! 頭悪いんか!」
さーちゃんはあたしたちに向かって大きく手を振るふと、ホームに姿を消す。
「何なのアイツ!」
「あたしもちゃんと探してみるね、ベルト。明日からはちゃんと練習もしよう」
そう言ったら、いっちーは大人しくうなずいた。
「私もちょっと勉強してくる」
「うん」
「バカはバカ同士でつるんどんか! 腐っとる!」
その場で別れる。
あたしはこれからのことを色々と考えなから、前へと踏み出した。