きみに ひとめぼれ



楽しかった思い出のはずなのに、思い出せば思い出すほど切なく悲しくなってくるとはどういうことだろう。

しかも修学旅行の思い出が。

修学旅行といったら、地味男子の僕にとって、高校三年間で一大イベントと言っていいイベントなのに。

その修学旅行が、こんな思い出になってしまうなんて。

これ以上どこで、最高の高校生活の思い出を残せばいいんだ。


いつでも楽しい思い出だけ残ってくれたらいいのに。


坂井さんにとって、あの修学旅行はどんな思い出になったんだろう。

隣を歩く坂井さんをちらりと見た。

切ない気持ちが溢れてくるのに、頬が緩む。


今からあいつと合流するから一緒にどうかと誘ったけれど、今は合わせる顔がないからと彼女は先に門へと向かった。


「じゃあ、また明日」


彼女は僕に手を振った。

女子に手を振られることなんて初めてだった。

どう振り返すのが正解なんだろう。

グラウンドから校舎に向かって恥ずかしげもなく両手を彼女に振っていたあいつの姿が思い出された。

僕は軽く手を挙げて、彼女に応えた。

それが精いっぱいで、それすら恥ずかしかった。