きみに ひとめぼれ



残りの日程をこなして、いよいよ京都とも別れの時が来た。

帰りのバスで女子と座る人をじゃんけんで決めた。


僕は、負けた。

つまり、僕が女子と座るということだ。


じゃんけんで負けた瞬間は、「えー、マジで?」と不満を漏らしてみたけど、本当はまんざらでもなかった。

だけど女子とふれあえる期待が半分で、残りの半分は、女子と二人で何を話したらいいのかわからない不安だった。

話さなくても、どういう態勢で座っていたらいいのかとか、視線をどこに置いたらいいのかとか、そんな細かいシミュレーションしていた。



__隣が坂井さんだったら……



そんな期待を胸に、あいつの背中を追ってバスに乗り込んだ。

入り口の狭い階段を上ったところで、あいつは急に足を止めた。

急に止まったのであいつのリュックに顔をぶつけた。

顔をゆがめている間に、あいつは再びゆっくりと進み始めた。

グループで決められた座席のところへ。

ずんずん進んでいくと、あいつは自分が座るはずの席を通り越していった。


そして、


「ここ、座っていい?」


そう聞いた。

聞いた相手は、坂井さんだった。


坂井さんは一人でそこに座っていた。

あいつが指さしたのは、僕が座るはずの席だった。



じゃんけんで、ちゃんと負けた僕が。



「ああ、うん、どうぞ」


と、坂井さんはあいつを席に招いた。

あいつはとても自然に、坂井さんの隣に腰を下ろした。

僕たちの方に、目を合わせることもなかった。

呆然と立ちすくむ僕にさえ。


何も考えることができないまま、あいつと坂井さんが座る席の前の席に座った。

そこしか、僕に席はないんだから。

だけど、席に着いてからも、僕はそわそわして落ち着かなかった。

なんとか落ち着かせるために、両手をぐっと握ってみた。


「岡田さんが写真送ってくれるから、連絡先教えて良い?」


後ろからあいつが急に声をかけてきて、体が大きくびくんと揺れた。


「ああ、いいよ」


と僕は高鳴る心臓を抑えるように答えた。

あいつと目を合わせることはできなかった。

しばらくすると、招待メールが届いた。

あいつも坂井さんもすでにグループに入っていた。

坂井さんの連絡先も知ることができたのに、僕の気持ちは嬉しいというより沈んでいた。

次々と写真が送られてくるんだけど、それを見る余裕もなかった。

そうしている間にバスが出発した。