坂井さんとはすれ違いばかりだと嘆いておいてなんだけど、そうでもないのか、とふと頭が切り替わる。
だって、修学旅行で僕たちは、ちゃんと同じグループになったんだったから。
「僕たち」というのは、あいつと坂井さんと、僕だ。
これまた、出席番号順によって決められたグループだった。
坂井さんと何らかの形で接点が持てることに、密かに気持ちが高ぶっていた。
接点ができたからと言って、僕に何ができるのかと言ったら、何もないんだけど。
「園田君は?」
女子からそんな風に名前を呼ばれることも普段ないから、なんだか照れた。
だけど彼女がいつも一番に呼ぶ名前は、僕じゃなかった。
「勝見君は?」
彼女が一番に発する名前は、あいつだった。
班で計画を立てている間、二人が仲良くじゃれ合うように話しているのを、僕はぼんやり眺めることしかできなかった。
そこに混ざることも、何か提案することもなかった。
自分にその眼差しが向けられるのを、ただ待つことしかできなかった。
それでも修学旅行はずっと楽しかった。
女子の計画ってすごいと思った。
そしてそのパワーもすごかった。
あいつは熱心に女子のサポートをしていた。
女子のサポートというより、坂井さんのサポートをしていた。
あいつは気づいてないかもしれないけど。
あいつは坂井さんから離れようとしなかった。
二人は端から見ると恋人たちの旅行のようだった。
一応僕ともう一人の男子も、他の女子たちの視線に呼ばれてせっせとサポート役に回っていたんだけど、一切そんな雰囲気にはならなかった。


