きみに ひとめぼれ



下校の最終チャイムが鳴って、僕たちは急いで下に降りた。

そして並んで歩いた。

僕が女子と二人で並んで歩くなんて、まだ信じられない。

歩調はどんな感じで合わせればいいのかさえわかっていない。


僕の右側に彼女がいる。

僕の右肩には、あいつのカバン。


それは、今の僕たちを表すのに絶妙な距離感だった。


「勝見君、部活にも出てなかったね。私のせいかな」


彼女は困ったように笑っていたけれど、元気はなかった。


「そんなことないよ。

 何となく、そういう気分じゃなかっただけだよ」


「ああ、何となく、ね」


そう言って彼女はふふっと笑う。

何かおかしかっただろうか。

ふと彼女のかばんに張り付いているように見える生八つ橋が目に入った。

真ん中がほんのりピンク色の三角形。

その三角形に頭の片隅にうっすらと残る妙な記憶を思い起こしている途中で、「そういえば……」と彼女が切り出した。


「園田君は、どうして私が勝見君のこと好きってわかったの?」

「え?」


 キラキラとした目を僕の方に向ける彼女から、僕は思わず目をそらした。


__どうしてって、それは……


「実は、僕……、あの、意外と思うかもしれないけど、そういう勘、鋭いんだよね。

 男女の色恋沙汰、みたいな」


嘘だ。

そんなわけない。

人の色恋沙汰なんて、いつも誰かに教えてもらってようやく気づく。

女子の考えてることなんて全然わからない。

いつも自分の一番近くにいた男子の駆け引きにだって、気づけてなかったのに。


それなのに彼女は「へえ、すごいねえ」なんて感心してくれる。

そんな彼女の横顔に、切ないまなざしを送らずにはいられなかった。



__坂井さんがあいつのこと好きだって気づいたのは……


  僕がずっと、坂井さんのことを見てたからだよ。

  恥ずかしいくらい、飽きずに。




 彼女に向けた眼差しを、僕は空に移した。

 

最初に坂井さんの近くにいたのは僕だった。

その時からずっと、僕は彼女を見てきた。

なのに、坂井さんの目に、僕は映らなかったのだろうか。

どうしてあいつなんだろう。

あいつの隣には、いつも僕がいたのに。

どうして僕のことは、見てくれないんだろう。

出席番号だって、僕もあいつも、坂井さんと前後じゃないか。

僕もあいつも、同じサッカー部じゃないか。

僕もあいつもイケメンじゃないし、存在感も薄いよ。

それなのに、どうして……。

どうしてズレてしまったのだろう。


テストの席も、生物のグループも、修学旅行も……。



__修学旅行……。



僕は彼女と肩を並べながら、最近の思い出なのに、遠い記憶のように感じる修学旅行のことを思い出していた。