きみに ひとめぼれ



グループで決めた京都のコースは、一日目は河原町や祇園がある繁華街。

二日目は太秦映画村に行ったり嵐山を散策。

三日目は清水寺辺りで買い物。

結構過密スケジュールだった。

私はドキドキも、ワクワクも、そわそわも、全部鞄に詰め込んでバスに乗り込んだんだけど、二泊三日はあっという間に過ぎていった。

実際詰め込みすぎて行けないところもあったけど、大方満足だった。

何しろ男の子たちが優しく、主張のない人ばかりなのが良かった。

基本的な移動は京都の市バスだったけど、観光地だからか人が多く、バスで移動するだけで疲れてしまった。

だけどそんなときは飲食店に入って休ませてくれたし、荷物を持ってくれた。

バスで移動するときは積極的に空いている席を探して座らせてくれた。

別に注文しなくてもいいのに、私たちと同じように京都のスイーツを堪能してくれた。

日程が遅れたり間に合わなくても、苦笑いだけして文句も言わない。

私たち女子ばかりが、息を切らして予定コースをこなそうと躍起になっていた。


学校へ向かうバスの周りには、次々と観光を終えた生徒たちが集まってきた。

私たちのグループも、何とか時間までに集合場所にたどり着いた。


「帰りのバスの席どうする?」


バスに乗り込む前に同じグループ行動をした由美が声をかけた。


「私帰りは絶対寝るから、男子の隣は嫌なんだよね」

「私も」


 由美と、もう一人同じグループの詩織は眠そうな顔をして拒否した。


「私、男子の隣でもいいよ」

「えーほんと? いいの?」と二人のキラキラした笑顔が復活する。

「いいよ、いいよ」と私も笑った。

でも由美の次の言葉で、一瞬息が止まった。



「でも、勝見君だったら、私隣でもいいかな」

「そういえば行きも由美が勝見君と隣だったよね。何かあったな」


 詩織がニヤニヤしながら言った。


「そうなんだよねえ。

 勝見君って教室でも存在感薄いし、特にかっこよくもないし、ただの同じクラスの男子って思ってたけど、話してみると結構楽しかった。

 笑った顔もかわいいしさ。

 体育祭の一件でちょっと見る目変わったし」


「体育祭のリレー、すごかったよね。

 あれは確かにちょっとカッコよかったかも。

 この旅行中もずっと気遣ってくれてたし。男子がっていうより、勝見君が特別優しかったよね」

 

そんな言葉を聞いてドキドキした。

勝見君が女の子の話題になっている。


確かにこの旅行中、勝見君はとても優しかった。

混雑しているバスの中で人混みに押されないように庇ってくれていたり、お土産を持ってくれたり、ちょっとしたものを買ってくれたり。

私はそれを、自分だけ特別、なんて思ってたんだ。

だけど、他の女の子にも、勝見君は同じように接してたんだ。

勝見君は、優しいんだ。

みんなに。

「自分だけ」なんて自惚れていた自分が恥ずかしい。

だけど、恥ずかしさよりも不安がよぎった。


勝見君が、他の子に取られちゃう。


そんな風に思った。

怖くて話を聞かないようにしていた。

それなのに、どんどん耳に入ってくる。


「撮った写真送るからとか言って連絡先聞いちゃおうかな」


 そういえば、私は勝見君の連絡先も知らない。


「好きな子とかいるのかな。付き合ってる子とか」



 好きな子。

 付き合ってる子。

 そんなこと、聞いてもいいのかな。



「私がまた勝見君の隣でもいい?」


由美の言葉にはっと意識が戻った。




__だめ。


 

言葉にならなかった。

でも、どうして私がダメなんて言えるの?

彼女でもないのに。


「あかりも、それでいい?」


その言葉に、由美の興奮した声に、「うん」と小さく答えることしかできなかった。