きみに ひとめぼれ



最後まで残っていた私たちがプリントを集めて職員室に持っていく。

勝見君は一緒に行くと言ってくれたけど、部活があるから私が行くことになった。

数学の宿題はまた明日の放課後ということになった。

私も掃除当番があるから急いで教室に戻る。

ただ、みんなが私にいてほしいのは掃除の最後、ゴミ捨てに行く時だけだろう。

一か月の掃除当番は長い。

本田君を好きだったころは、毎日テニス部の前を通るのが楽しみで、ゴミ捨てなんて全然苦じゃなかった。

こういう口実がないと、なかなか本田君を間近で見ることはなかった。

帰宅部の私がテニスコートに向かって歩いてたら、なんか変でしょ?

それこそ本田君への気持ちが見え見えだ。

フラれた今となっては、掃除当番の残りの日々が長く感じる。



生物室から教室に戻ると、まだ掃除の最中で、教室の窓が開け放たれていた。

生ぬるい風がふわりふわりと吹いてきて、汗で首元に巻き付いた髪を乾かしてはさらっていく。

教室中の埃が渦を巻きながら吐き出されていくと、だんだんすがすがしい空気が戻ってくる。

すると、先ほどの生ぬるい風が嘘のように変わった。


次の季節が顔を出したようだった。


その風に誘われるように、窓際に寄り添った。

ふと窓の外を見ると、サッカー部が練習している。

勝見君が、そこにいた。

私にはサッカーのルールなんてよくわからないけど、勝見君が楽しそうなのはわかる。

上手いのもわかる。

ボールが勝見君に吸い寄せられる。

ボールが勝見君に恋をしているようだった。

勝見君はゴール近くまでボールを運ぶと、思い切り足を振り上げた。

そのままシュートかと思ったら、同じチームの人にパスをする。

あれは、広瀬君だ。

広瀬君も学校では評判のイケメンで、よく目立つし華やかな人だから、女子からの人気も高い。

広瀬君がゴールを決めた。

それと同時にピーっと甲高い笛の音が鳴る。

サッカー部を見ていた女の子たちのキラキラとした歓声が上がる。

みんなが広瀬君に駆け寄る。

一方で勝見君は、コートの隅の方で、一人でリフティングをしている。

その姿は、やっぱり楽しそうだ。

ボールは勝見君から離れようとはせず、正確に勝見君の頭や胸や足に着地して、また同じ軌道を正確に描きながら離れていく。

そして再び、勝見君のところに戻ってくる。



__勝見君。

 

心の中で彼の名前を呼んだ。

風がふわりとその声をさらっていく。

頭でリズムよくボールをリフティングしている勝見君と、ふと目が合った。

勝見君が動きを止めると、ボールもようやく勝見君から離れていった。

勝見君はじっと私の方を見ていた。

私もじっと見ていた。

思わず顔が緩んだ。

勝見君の目尻も、ゆっくりと下がる。



__勝見君、好きだよ。



口元がむずむずしていた。

今すぐここから叫びたいくらい、私は勝見君を好きになっていた。