四限目が終わって昼休みの時間になる。各々が自由に弁当を持ち寄って、机を囲み友人と食事をしている中、僕はカバンから弁当を取りだして教室を出る。
教室を出た僕は周りを見渡して誰もいないことを確認して歩き出す。今から行く場所は、誰かに見つかったら少々めんどくさい場所。というか、見つかったら停学になるか退学になるような場所だ。見つかるわけにはいかない。
階段を降りて五階から二階へ。二階には、B棟へ続く渡り廊下がある。
僕がいつも授業を受け、学校生活を暮らしているのはA棟と呼ばれている。B棟には理科室や屋上へ続く階段などがあり、A棟には美術室や音楽室がある。職員室もA棟の一階にある。何かと便利なのは、A棟になる。
渡り廊下を渡る前に、もう一度誰も着いてきていないことを確認する。誰もいないとわかった僕は渡り廊下を渡る。
B棟はガヤガヤしている、いつもだ。基本的にはB棟は一年生や二年生などがいる。なんのしきたりなのかは知らないが、一年生と二年生はB棟と相場が決まっているらしい。A棟は、受験などを控えている三年生のクラスしかないため、B棟に比べたら静かだ。
喧騒の中を潜ってB棟四階に行く。階段を登って、四階に着く前にもう一度確認。ここ三年間これを繰り返しているが、誰かが着いてきたことなど、今の今まで一度もないのだが念の為するようにしていたら癖になってしまっていた。当然誰もいない。
B棟四階には屋上へ繋がっている階段がある。当たり前だが、屋上は危険なので扉の鍵は施錠されている。屋上へ続く階段があったところで入れない、と皆は思っている。
けれど、僕だけは知っている。屋上へ続く階段の先にある施錠されているはずの扉の鍵が壊れていることに。
一年生の頃何となく学校を一人でぶらぶらしていたら、屋上へ繋がる階段を見つけた。施錠はされているだろうと思っていたが、興味本位でドアノブを捻ったら開いてしまったのが始まりだ。それから僕はいつもここで一人でご飯を食べるようになった。秘密の基地のようで屋上で食べるご飯は一人ながらも楽しかった。
階段を登りドアノブに手をかける。ガチャ、と扉を開けると風が吹き抜ける。髪がなびき、視界が良好になる。
「へえ〜、屋上って入れたんだ」
「……ぶぉせっくおっとくす!?」
背中の方から彼女の声が聞こえて、僕は奇声を上げながらしりもちをつく。
「あっはっはっは!何、今の声!」
「……君が驚かすからいけないんだろう」
彼女はそんな僕を見て腹を抱えて大笑いする。情けないところを見られ、風が吹き抜けているというのに耳が紅葉のように熱く赤くなっていくのを感じた。
「だって、君がコソコソとどこかに行ってたからさ、気になって着いてきたんだ」
彼女は着いてきたと、あっけらかんに言う。僕は何回も誰も着いてきてないか確認したが、彼女の姿など無かった。彼女は幽霊か何かなのかなのだろうか。
「ここでのことは忘れて欲しい」
「入ったら行けない場所なんでしょ?先生から言われたよ、朝に。言っちゃおうかな〜、どうしようかな〜」
彼女はわざとらしく体をくねらせて、分かりやすく悩んでみせる。この行動はもっと誠心誠意込めて頼め、ということなのだろうか。
「お願いします。ここでのことは忘れてください」
「うん、いいよ。私も今ここにいる時点で同罪だしね。言ったら私も断罪されちゃうし」
「それもそうだ。よし、じゃあここでのことは二人の秘密ということで」
「ふふ、いいよ。じゃあさ、ご飯一緒に食べよ。秘密を共有するもの同士さ」
「いいよ」
彼女は背中から弁当を取りだす。僕も手にぶら下げていた弁当に目を移す。二人でちょうどいいフェンスに腰をかけて弁当を食べ始める。
教室を出た僕は周りを見渡して誰もいないことを確認して歩き出す。今から行く場所は、誰かに見つかったら少々めんどくさい場所。というか、見つかったら停学になるか退学になるような場所だ。見つかるわけにはいかない。
階段を降りて五階から二階へ。二階には、B棟へ続く渡り廊下がある。
僕がいつも授業を受け、学校生活を暮らしているのはA棟と呼ばれている。B棟には理科室や屋上へ続く階段などがあり、A棟には美術室や音楽室がある。職員室もA棟の一階にある。何かと便利なのは、A棟になる。
渡り廊下を渡る前に、もう一度誰も着いてきていないことを確認する。誰もいないとわかった僕は渡り廊下を渡る。
B棟はガヤガヤしている、いつもだ。基本的にはB棟は一年生や二年生などがいる。なんのしきたりなのかは知らないが、一年生と二年生はB棟と相場が決まっているらしい。A棟は、受験などを控えている三年生のクラスしかないため、B棟に比べたら静かだ。
喧騒の中を潜ってB棟四階に行く。階段を登って、四階に着く前にもう一度確認。ここ三年間これを繰り返しているが、誰かが着いてきたことなど、今の今まで一度もないのだが念の為するようにしていたら癖になってしまっていた。当然誰もいない。
B棟四階には屋上へ繋がっている階段がある。当たり前だが、屋上は危険なので扉の鍵は施錠されている。屋上へ続く階段があったところで入れない、と皆は思っている。
けれど、僕だけは知っている。屋上へ続く階段の先にある施錠されているはずの扉の鍵が壊れていることに。
一年生の頃何となく学校を一人でぶらぶらしていたら、屋上へ繋がる階段を見つけた。施錠はされているだろうと思っていたが、興味本位でドアノブを捻ったら開いてしまったのが始まりだ。それから僕はいつもここで一人でご飯を食べるようになった。秘密の基地のようで屋上で食べるご飯は一人ながらも楽しかった。
階段を登りドアノブに手をかける。ガチャ、と扉を開けると風が吹き抜ける。髪がなびき、視界が良好になる。
「へえ〜、屋上って入れたんだ」
「……ぶぉせっくおっとくす!?」
背中の方から彼女の声が聞こえて、僕は奇声を上げながらしりもちをつく。
「あっはっはっは!何、今の声!」
「……君が驚かすからいけないんだろう」
彼女はそんな僕を見て腹を抱えて大笑いする。情けないところを見られ、風が吹き抜けているというのに耳が紅葉のように熱く赤くなっていくのを感じた。
「だって、君がコソコソとどこかに行ってたからさ、気になって着いてきたんだ」
彼女は着いてきたと、あっけらかんに言う。僕は何回も誰も着いてきてないか確認したが、彼女の姿など無かった。彼女は幽霊か何かなのかなのだろうか。
「ここでのことは忘れて欲しい」
「入ったら行けない場所なんでしょ?先生から言われたよ、朝に。言っちゃおうかな〜、どうしようかな〜」
彼女はわざとらしく体をくねらせて、分かりやすく悩んでみせる。この行動はもっと誠心誠意込めて頼め、ということなのだろうか。
「お願いします。ここでのことは忘れてください」
「うん、いいよ。私も今ここにいる時点で同罪だしね。言ったら私も断罪されちゃうし」
「それもそうだ。よし、じゃあここでのことは二人の秘密ということで」
「ふふ、いいよ。じゃあさ、ご飯一緒に食べよ。秘密を共有するもの同士さ」
「いいよ」
彼女は背中から弁当を取りだす。僕も手にぶら下げていた弁当に目を移す。二人でちょうどいいフェンスに腰をかけて弁当を食べ始める。