「あ、琴!今日もお弁当作ったから! 机の上に置いているから、それじゃ、父さん行ってくるな!」
「うん、行ってらっしゃい。父さん」
慌ただしく家を出ていく父さんを僕は見送る。シワがよって、年季の入ったスーツは父さんのキャリアの積み上げを表していた。バタン、と閉まった扉を数秒見つめてから、机の上にあると言われた弁当を通学カバンに入れ、家を後にする。
父さんはいつも僕の出る時間に合わせている。理由を訪ねてみたらギリギリまで家族の時間が欲しいとの事だった。しかし、それで遅刻などしてしまったら元も子もないのだが。 子煩悩な父を少しだけ憂いながら、眩しく光る太陽に目をやる。
今日も気温は最高気温を更新したらしい。毎日、最高気温を更新するとは一体どういうつもりなのだろうか。たまに更新するから、特別感が出るというものなのに、こう毎日も更新されたら友達と会話することがなくってしまうだろう。まあ、友達はいないのだけど。
そんな寂しい事を考えていると、肩に誰かの腕が当たる。
「あ、ごめんなさい! 怪我ないですか?」
「はい、ピンピンしてます。そっちこそ怪我してませんか?」
「私、頑丈なので! って、その制服、同じ高校じゃん! さらにネクタイの色も赤! 同学年だ!」
「あ、本当だ。同じ高校じゃん」
僕が通っている高校は、男子はネクタイの色、女子はリボンの色で学年がわかるようにされていた。彼女が、腕を通していた制服は紺色のブレザーで、首元には赤のリボンがぶら下がっている。赤のリボンは、赤のネクタイを付けている僕と同じ学年である証拠だ。
それにしても、華奢な体型だな。モデルのようだ。髪の毛も黒色で制服が綺麗に映えている。
「あ、私は月海紅葉! あなたは?」
「音成琴。 初めましてで、失礼かもだけど、同学年なのに一度も見たことないや。転校生?」
「……音成琴。 あ、ううん。私ね、転校生というか、この二年間休学してて今日からまた登校再開なんだ。それで浮かれて走ってたら、君にぶつかっちゃって」
「あ、そうなんだ。浮かれるのも当然だね」
少し恥ずかしそうに言葉を紡ぐ、君の面影をそんな遠くない昔に見たことがある気がするけど、きっと気のせいだろう。
僕は二年間も休学してて大丈夫なのだろうか?と疑問に思ったが、聞かれたくない理由だった場合、それは彼女の心に土足でズガズガと非常識にあがることになってしまう。出かけた言葉にコルクをする。
「うん。あっ!そうだ。どうせ、同じ高校なんだし、一緒に登校しよう?どうせ、行くところは同じなんだし」
「まあ、いいよ」
誰かと登校するのが久しぶりな僕にとって、横に並んで歩く彼女はあまりに非現実的な存在だった。
「うん、行ってらっしゃい。父さん」
慌ただしく家を出ていく父さんを僕は見送る。シワがよって、年季の入ったスーツは父さんのキャリアの積み上げを表していた。バタン、と閉まった扉を数秒見つめてから、机の上にあると言われた弁当を通学カバンに入れ、家を後にする。
父さんはいつも僕の出る時間に合わせている。理由を訪ねてみたらギリギリまで家族の時間が欲しいとの事だった。しかし、それで遅刻などしてしまったら元も子もないのだが。 子煩悩な父を少しだけ憂いながら、眩しく光る太陽に目をやる。
今日も気温は最高気温を更新したらしい。毎日、最高気温を更新するとは一体どういうつもりなのだろうか。たまに更新するから、特別感が出るというものなのに、こう毎日も更新されたら友達と会話することがなくってしまうだろう。まあ、友達はいないのだけど。
そんな寂しい事を考えていると、肩に誰かの腕が当たる。
「あ、ごめんなさい! 怪我ないですか?」
「はい、ピンピンしてます。そっちこそ怪我してませんか?」
「私、頑丈なので! って、その制服、同じ高校じゃん! さらにネクタイの色も赤! 同学年だ!」
「あ、本当だ。同じ高校じゃん」
僕が通っている高校は、男子はネクタイの色、女子はリボンの色で学年がわかるようにされていた。彼女が、腕を通していた制服は紺色のブレザーで、首元には赤のリボンがぶら下がっている。赤のリボンは、赤のネクタイを付けている僕と同じ学年である証拠だ。
それにしても、華奢な体型だな。モデルのようだ。髪の毛も黒色で制服が綺麗に映えている。
「あ、私は月海紅葉! あなたは?」
「音成琴。 初めましてで、失礼かもだけど、同学年なのに一度も見たことないや。転校生?」
「……音成琴。 あ、ううん。私ね、転校生というか、この二年間休学してて今日からまた登校再開なんだ。それで浮かれて走ってたら、君にぶつかっちゃって」
「あ、そうなんだ。浮かれるのも当然だね」
少し恥ずかしそうに言葉を紡ぐ、君の面影をそんな遠くない昔に見たことがある気がするけど、きっと気のせいだろう。
僕は二年間も休学してて大丈夫なのだろうか?と疑問に思ったが、聞かれたくない理由だった場合、それは彼女の心に土足でズガズガと非常識にあがることになってしまう。出かけた言葉にコルクをする。
「うん。あっ!そうだ。どうせ、同じ高校なんだし、一緒に登校しよう?どうせ、行くところは同じなんだし」
「まあ、いいよ」
誰かと登校するのが久しぶりな僕にとって、横に並んで歩く彼女はあまりに非現実的な存在だった。