「紺野、今日の放課後の図書委員の話し合い、一緒に行かない?」
 翌日、休み時間に文庫本を読んでいると、坂木くんがうしろから私の席に来て、机に手をついてきた。教室内は、ガヤガヤと騒がしい。
「え? あ……」
 朝のホームルームで、各委員会の話し合いがあることは聞いていた。けれど、まさか一緒に行こうなんて誘われると思っていなかった。
「いや……いいけど、いや……」
 しおりもはさまずに本を閉じ、どっちつかずの返事をする。
「図書室ってまだ行ったことないしさ、俺、方向音痴だからたどり着くか心配で」
「……方向音痴……」
 図書室はひとつ向こうの棟で、この教室からばっちり見えている。入学式当日に、先生からおおまかに各教室の場所の案内があったし、校内の地図も配布されたんだけどな。
「嘘だよ」
 ハハッと笑ったミスター爽やかは、アラタそのまんまの笑顔。いや、この人も新だった。
「一緒に行こうよ。同じクラスなんだし」
「わ……わかった」
 あれ? 私、坂木くんとまた話をしてる。話ができてる。アラタに似ているからかな? 他の人相手ほど緊張せずに話ができるのは。