彰人は新幹線に乗って窓の外を見ていた。
次々と流れてゆく景色はあやとの記憶のようでもあった。
あやに会えなくなってもうすぐ半年が過ぎようとしていた。
駅を出て電車とバスを乗り継ぎ、海沿いの小さな町を訪れた。
バスを降りると初夏の風が気持ち良く目の前には白い砂浜と青く澄んだ綺麗な海が広がっていた。
バス停の前には駄菓子屋さんがあって子どもたちが歓声をあげて通りを走っていた。
青い海は静かに小波を立てて穏やかな波が浜辺に打ち寄せていた。
空は抜けるように青く雲が気持ちよさそうに浮かんでいた。
砂浜に一人の女性が座り何処までも続く海を見つめていた。
「あやさん、、」
彰人はあやの名前を呼んだ。
「彰人さん、、」
あやは振り返った。
「また会えたね」彰人は笑っていた。
あやも眩しい笑顔を浮かべていた。
「何だか初めて会った日のことが昨日のことのように感じるね、、」
彰人はあやの横に立って打ち寄せる波を見ていた。
「うん、、」
あやは小さく頷いた。
「あやさん、、」
彰人はあやの名前を呼んだ。
「あの日、あやさんに出会わなければ僕は今頃死んでた、、」
「あやさんが僕の命を救ってくれたんだ、、」
「あやさんが僕に生きる希望を与えてくれた、、」
「あの日あやさんが僕を励ましてくれたように今度は僕があやさんを励まし続けるよ、、」
あやの肩が微かに震えていた。
優しい風が二人の間を通り抜け、白い波が寄せては返していた。
「それとね。もう一つ伝えたいことがあるんだ、、」
あやはただ黙って彰人の言葉を聞いていた。
「好きなんだ。あやさんのことが、、誰よりも、、」
「何も叶えられなかったけどあやさんに出会えたことが僕の誇りだよ、、」
「それと、、」
「そばにいるよ。ずっとあやさんのそばにいる、、」
あやは立ち上がり彰人を見つめた。
「彰人さん。救われたのは私の方だよ。あの日彰人さんに出会わなければ私は今頃何をしていたか分からない、、もしかしたら誤った道を歩いていたかも知れない、、」
「彰人さんが私を救ってくれたんだよ、、」
「何も叶えられなかったけど彰人さんに出会えたことが私の幸せ、、」
「それと、、」
あやは目を伏せた。
「彰人さんが私に愛を教えてくれた、、人を愛することを教えてくれたんだよ、、」
やがてゆっくりと顔を上げて彰人を見つめた。
「私も彰人さんが好き。誰よりも、、」
あやの顔を優しい光が照らしていた。
優しく降り注ぐ光は二人を照らしていた。
波はただ静かに寄せていて砂の粒が太陽の光に照らされてキラキラと輝いていた。
空は抜けるように青く優しい風が二人を包み込んだ。
彰人とあやはどこまでも続く青い空を見上げた。
空は鮮やかなスカイブルーに澄み渡っていたー
fin