スカイブルー  風音ソラ


 雨が降っていた。
鳴水彰人(なるみずあきと)は繁華街をただ行くあてもなく歩いていた。通りには疲れて帰るサラリーマンやOLそして、今から出勤であろうホステスたちが通りを往来していた。彰人は傘から溢れる水滴を手で払い、寄れたスーツに身を包んでいた。

 冴えないサラリーマンである彰人は今日にでも死のうかと漠然と考えていた。

 「最後に飲んで帰ろうかな、、」
そんなことを思っていると対向車線の車のベッドライトの光に目を覆った。

ふと水たまりに足を取られ電柱に思い切り激突した。
「はははっ、だせっ!」行き交う若者たちの笑い声が聞こえていた。

彰人が立ち上がると電柱の影に「恋愛相談所 AI(アイ)運命の恋をお探しします!」という看板が目に入った。派手な電飾の看板は恋愛アプリのキャッチコピーのような行く人の目を引くものだった。

「何だこれ?」
彰人は気になったが思い直して歩き出そうとしたがもう何年も恋人はおろか友達さえもいない彰人は看板の放つ力に釘付けになっていた。

 「ふっ。ばかばかしい」そう思い直してそのビルの一階にあるキャバクラに行こうとしたが何故か彰人は2Fの恋愛相談所なるところに足を運んだ。

 エレベーターに乗り暗いビルの2階に付いた。
自動ドアが空き受付の女性が頭を下げた。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
奥へと通されるとソファーが一つ置いてあるだけだった。

奥から銀縁のメガネをかけたオールバックの中年男性が出てきた。

「いらっしゃいませ。登録ですか?」
「いや、お話だけ聞こうと思いまして、、」
「そちらにおかけください」
いかにも怪しく落ち着かない雰囲気に来たことを既に後悔していた。

「当店は登録料1万円になります。それ以上の料金は一切かかりません。コンピューターAIシステムによってこの世で最適な人と出会えます」

「ただし、ご紹介は年に2回になります。キャンセル・退会はいつでも可能です」
彰人は良くあるたちの悪い紹介所だと思ったが人生最後の思い出にその場で一万円を支払った。

「それでは、お相手が見つかり次第こちらからご連絡します」
「分かりました」
彰人は出てきたお茶を一口飲んで相談所を後にした。

翌日彰人は酷い頭痛と共に目を覚ました。
昨日の深酒がたたり久しぶりの酒は体に堪えた。

 彰人は繁華街から少し離れた安いマンションで一人暮らしていた。故郷に置いてきた両親とももう何ヶ月も連絡を取っていない。家賃も滞納していて人生に夢や希望などなく人生最後の日の今日その人生を終えるつもりだった。

 彰人がぼんやりとタバコを吸っていると携帯に着信があった。

「恋愛相談所(アイ)です。お相手が見つかりました。お相手の方の年齢は30歳でフリーライターの方になります。一度事務所でお顔合わせをお願いします」やけに丁寧な昨日の相談所の店長に一方的な案内を受けた。

「分かりました。お伺いします」
彰人はそう告げると車のエンジンをかけて冬の近づく秋の夕暮れを繁華街へと向かって走り出したー